『QED 出雲神伝説』(☆3.6)  著者:高田崇史

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まずはあらすじ。

奈良のマンション内、独身OLが出雲刀で惨殺された。密室殺人の手がかりは、壁に残された奇妙な紋様のみ。二週間前起きたひき逃げ事件の現場にも、同じ紋様が。遙か昔に実在したという忍び集団「出雲神流」との関連が疑われるなか、桑原崇と棚旗奈々は現場を訪れた。古代出雲にまつわる忌まわしき真実が明らかにされる。

Amazon用あらすじより

 前回の記事でちらっと予告したとおり、「QED」シリーズの記事補完の為の再読。本編に当たる『出雲神伝説』と短編『出雲大遷宮』を収録。


『出雲神伝説』

 今回は「出雲」。出雲といえば出雲大社出雲大社といえば島根・・・な、はずと思っていましたが、今回の舞台は奈良。京都亀岡にある「出雲大神宮」は知っていたけど、奈良に「出雲」があるのはしらなかったなぁ〜。でも、何度か奈良には行っているので、行ったことのある寺社もあってちょっと嬉しい。
 薀蓄そのものも、「諏訪の神霊」に比べらたらその侵出度は控えめな感じがしました。だから、シリーズ後期の中では読みやすい部類に入ってるんじゃないか、と思います。「相撲の祖」野見宿禰の歴史上のアリバイ(?)の解釈についてはなるほどと思ったし、さらっと触れられる邪馬台国についての考え方も、成程こういう視点もあるのね、と感じました。ただ全体としては控えめな分、論としてのインパクトは少し薄いかも。

 さてと、もうひとつの作品の柱、殺人事件と歴史の謎の融合ですが・・・ううむ・・・すごいなぁ・・・(苦笑)。最初の密室殺人と思われる現場に残された紋様について、警察やら関係者やらタタルさんやらが、様々な解き方を披露(?)するのですが、これがまた、それだったら何でも有りじゃん!!みたいな解釈なので、どこまで本気なのか分からない・・。しかも、この紋様が実は◯◯だったと分かって脱力・・・。シリーズでもいつも引っ掛かる動機(?)の部分に関しても、直接的な動機の部分に関しては何となく説得力はあると思うけど、歴史との関係性についてとなると微妙、さらに事件の裏にあるもう一つの思惑に関してはそれを考えてる人が「the QED」な歴史信者さんなので、「そこでそう思うか!!」という、シリーズのお約束パターン(あくまで個人感想)。まぁ、例のごとく動機に関してのは理解は半分ぐらい諦めてるシリーズなのでいいんですけどね。

 おっと、そうだ、このシリーズの一番のメインはタタルさんと奈々ちゃんの恋(?)の行方だった。うんうん、タタルさんの計算だか天然だか分からない発言(「今度二人で旅行に行こう。ただし、史跡めぐり」みたいな)はあるものの、なんだか少し距離が縮まったかな。最後の場面は奥手の奈々ちゃんが頑張ってなんだかほんわか^^。

『出雲大遷宮

 「出雲神伝説」から9年、平成の大遷宮を控えた「本家(?)」出雲が舞台。短編というにも短いような。今回は現実の事件は起こらず、出雲大社にまつわるプチ疑問を解く感じ。殆ど著者の取材記を小説風にしました、という感じで、かなり狭い範囲のガイド本という方が正解だったりして。自分のFacebookでは時々記事にしてるんですが、わりと寺社仏閣(&温泉)めぐりをしていますが、そのキッカケとなったのが身近な有名ドコロが舞台になったこの作品だったっと記憶しています。実際、この短編に登場するタタルさんが行きたいと言っていた神社は全てまわりました^^;;

 そして9年もたてばみんな変わっているわけで、なにより小松崎さんに子供が!!しかも◯◯!!みたいな。相手は一体!?さらっとタタルさんが教育論(家族論?)的な事を触れますが、タタルさん自身の私生活には触れられず。この作品では登場しない奈々ちゃんとは今どうなってるんでしょうか?


採点  ☆3.6