『毒草師 七夕の雨闇』(☆4.2) 著者:高田崇史

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まずはあらすじ。

織女と牽牛は決して会ってはならぬ……。七夕はおそろしく陰湿な祭だった!

「り……に、毒を」不可解な言葉と密室の連続毒殺事件。毒物は特定されず摂取経路も不明。事件に影を落とすのは《七夕伝説》の闇。なぜ七夕は七月七日なのか。「金銀砂子」に隠された秘密、子孫根絶やしの呪いとは。《毒草師》こと名探偵・御名形史紋がすべてを解き明かすとき、古代史のタブーが現れる。驚愕の民俗学ミステリー。

Amazon用あらすじより

 久しぶりに読む毒草師シリーズ。本編「QED」シリーズは完結(とはいっても、外伝が出てしまいましたが)したけれど、このシリーズはもう少し続きそうなんでしょうか?
 前3作のストーリーはあまり記憶にないですが、そこまでネタバレやリンク要素がないので、とりあえず御名形史紋と西田くん、百合さんさえ覚えていれば問題無い感じ。

 今回はタイトルでも分かる通りキーワードは七夕。高田作品らしく、「QED」に負けないくらいこの作品も薀蓄がすごい事になってます。七夕の読み方(今まで疑問に思わなかったのですが、確かに普通は「たなばた」とはよめない)やそれに纏わる行事にそんな意味があったとは・・・。高田さんの歴史に関する考察については、ご自身のオリジナルの時もあれば、他の研究家の説を高田さんなりに消化して、小説の形まで練り上げたものがあったりといろいろですが、今回のこのネタはどうなんでしょうね。

 ちなみに、「QED」(「カンナ」でも?)でもお馴染み「たたら」に関するエピソードも登場しますが、なんとなく同じような内容を喋っていても(実際今回の薀蓄の中には「QED」でも紹介されているものがある・・ような気がする)、タタルさんより史紋さんの方が頭に入ってくるような気がします。これはタタルさんの相棒奈々さんより、史紋さんの相棒西田くんの方が覚えが悪いから優しめに語ってるからかも・・なんて思いましたが。

 もう一つ、付け足しのようになってしまうことが多い現実の事件ですが、今回は結構なペースでで被害者が出てます。これだけの規模とスピード感は「QED」でも無かったかも。更には高田作品によく見られる、「歴史の謎」と「現実の事件」のリンクがぎこちなさに関しても、この作品に関しては殆ど感じませんでした。「七夕」の中に隠された織姫・彦星の正体と、事件の中心となる「星祭家」に隠された秘密が表裏一体、鏡合わせ状態。他のシリーズに見られる異様、というか理解し難い動機についてもこの作品は少なくとも納得は出来ました。
 さらに、今回は今まで以上に「QED」シリーズとのちょっとしたリンクが楽しめました。捜査に登場する警官がかつて貴船で起きた事件(「QED 六歌仙の暗号」)でタタルさんと関わっており、それに気づいた史紋が柄にもなく反応を示したと思えば、唐突に奈々さんの名前を出したりなんかします。この反応を見ると、史紋はかなりタタルさんを意識してるんだ、もしかしたら奈々さんの事を憎からず思っていたんじゃないかと想像させてくれます。そういえば「QED」で史紋が登場した時なんかは、「もしかして恋のライバル!?」なんて思ったもんですね(実際には奈々さんは・・・な訳ですが)。「QED」コンビは「カンナ」シリーズでもその影を見せてくれてたし、もしかしたら今後も色んな所でそれぞれのカメオ出演が楽しめるかな。

 作品全体として、本筋の部分や遊びの部分も含めて、「毒草師」シリーズのみならず、「QED」シリーズまで含めても完成度は上位にくる出来栄えだったと思います。

 久しぶりに高田さん記事の書庫、なんだか中途半端なところで終わってますねぇ。一応「QED」も「カンナ」も「神の時空」も全部読んでるので、書庫補完の為の再読をしてみようかなぁ。。でも「カンナ」シリーズの再読はなんかしんどそうな気がする・・・。


採点  ☆4.2