『緋色の習作」(⭐3.6)  著者:コナン=ドイル

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まずはあらすじ。

空家で殺されていた謎の死体。その壁に血で書かれた〈復讐〉の文字。この事件こそは、イギリスの軍医としてインドで従軍し、負傷して帰国したワトスン医師が、名探偵の名も高いホームズと出会い、初めて手がけた、忘れがたい最初の事件であった。とまどう警察を尻目に、快刀乱麻を断つがごときホームズのあざやかな推理は、過去にさかのぼって驚くべき真相に到達する。

kindle版「緋色の研究」あらすじより


 かつて「僕の苦手な名探偵」で2位にランクインさせたシャーロック・ホームズ。久しぶりに記事を読み返してみると、まぁアバウトな印象で決めてるなぁ・・
 少し前にBBCのドラマ「SHERLOCK」を見た事、そしてグラナダ版「シャーロックホームズの冒険」のブルーレイセットを買ったのをきっかけに久しぶりにホームズを読んでみようという気に・・
 どうせ読むなら刊行順にと思い本屋を探す・・・そこにはたくさんのホームズが・・
 最近の新訳ブームの中で、角川やら光文社やらなんやらかんやら、どれがいいのか悩む事しきり。とりあえず古本で光文社版と河出文庫版を買って少し読み比べる・・
 ううん・・そこまで違いが分からないけど、なんとなく河出版の方が品がある(?)気がするし注釈や挿絵も多いし・・というアバウトな印象で河出文庫版でトライ!!

 それにしても「緋色の習作」を読むのは多分中学生(もしかしたら小学生?)以来、当時は「緋色の研究」と訳されたタイトル(こっちの方がメジャーですよね)だったと思いながら読み進める・・・

 いやぁ、結構印象が違うなぁ・・
 というよりは、あまりにも昔に読んだから記憶違いに気づく場面が多い事。ワトスンの経歴を当てる有名なシーン、意外と推理が緻密な推論というよりももう少しアバウトだったし、僕の記憶の中ではホームズで出てくる警察官といえばレストレイドだったのだけれども、事件の依頼をしてきたのは同僚のグレグスンだったし(小説を通してレストレイドはグレグスンよりも脇役感がたっぷり・・・)、なによりタイトルの「緋色の習作(研究)」の緋色はダイイングメッセージの「REACH」の事だと思ってたら

「・・・(略)・・・これまでで最高の対象研究を逃すところだった。芸術的な言い方をして、緋色で描いた習作とでも呼ぼうか。人生という無職の糸かせの中に、殺人という一本の緋色の糸がまぎれこんでいる。ぼくたちの仕事はその緋色の糸をほぐして、分離して、そのすべてを、端から端まで取り出すことなのだ。・・・(略)・・・」

という会話の中で出てきて、「REACH」の文字が血で描かれている事とはまったく関係無かったのが一番のショック。
 
 そしてみなさん大好き(?)ホームズも、記憶の中では超人的な推理力を発揮してるとばっかり思ってたら、なんとも人間臭い。ワトスン相手に推理を披露していたと思ったら、あなり話すぎるとホームズも普通の人間なんだと思われてしまう、と心配してみたり、犯人特定をグレグスンに先を越されそうだと焦ったり(実際にはグレグスンは間違えていたんだけど)、些細な失敗で自分のプランが崩れそうになったら動揺してみたり。。もしかしたら処女作としてキャラがまだもう少し固まっていないのかも、という感じた場面もあったり。このなんとも言えない人間臭さは、今までの記憶の中に無かった分、結構ホームズの苦手度が下がったかも。


 肝心の本編でいうと、事件そのものはシンプルな構成で第1部終わりで犯人の名前が明かされるし(この段階では誰なんだお前は!!と悩みました・・)、科学的操作もおそらく黎明期なんだろう、そんなに重要でない。その分だけ、ホームズの思考能力が際立つように見える構成になってるんだとおもう。 深読みすると、第一部の前半の方であった何気ない会話が実はいろいろな伏線や物語のストーリーとして浮かび上がってきて、自分が想像してなかった部分の面白さが感じられました。

 後半の第2部は過去に遡り、犯行の動機が語られる。事件がシンプルなせいで、どちらかというと第2部の方の大河ドラマ的な展開の方が印象に残った。特に今までいた大切な人がいなくなったなんともいえない恐怖感はこの小説の一番のハイライトなんじゃないかなって、読みながら思いました。

 再読の期間が空きすぎて、もはや新作を読むというよりは初読といったほうが感じだったけれども、自分が想像してた場面よりも違うところで印象に残ったて、全体としても一気に読める面白さがあった。
 とりあえず今回の再読を聞きにシリーズを読み返していこうとおもう。。



採点  ☆3.6