『赤い橋の殺人』(☆2.6) 著者:シャルル・バルバラ

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まずはあらすじ。

19世紀中葉のパリ。急に金回りがよくなり、かつての貧しい生活から一転して、社交界の中心人物になったクレマン。無神論者としての信条を捨てたかのように、著名人との交友を楽しんでいた。だが、ある過去の殺人の真相が自宅のサロンで語られると、異様な動揺を示し始める。 

本書あらすじより


「これぞフランス版『罪と罰』だ!」(亀山郁夫ロシア文学者)

フランスで150年もの間、忘却の闇に埋もれていた作家が、一人の日本人研究家によって「発掘」され、いまや本国でも古典の地位を獲得しつつある。この作家こそがバルバラである。ボードレールの親友であり、巧みなストーリーテリングと文体の音楽性、そして哲学的思考に秀でた稀有の小説家である、本編は彼の代表作。

本書帯推薦文より

 広島のとある古本屋を巡っていた時、本棚の片隅で見つけた本。まったく知らない作者なんだけど、タイトル、帯の煽り、あらすじ・・・なんだか惹かれませんか?唯一、フランス版罪と罰、というところに微かな不安を感じたが、200ページ弱だし、とりあえず同じ棚に並んだカーの「ビロードの悪魔」と一緒に購入。

 そして読み始めてから読み終わるまで・・・一週間!!まさかの読了時間。。

 冒頭、本書の語り部であるマックスとその友人ロドルフの間で交わされる芸術論。芸術作品を生み出すには、困難や苦労が必要であるか否か・・・その後のマックスと本作品の主役となるクレマンとの間で交わされる神学論・・・ううむ、しんどい。。。
 ブログを読んでいただいてる人にはなんとなく分かってもらえるかもしれないが、とにかくそこそこの読書量の中で、極端に海外小説が少ないのです。それも殆どがミステリ(しかも古典)なので、どちらかというと純(?)文学系はほとんど手をつけていない、もちろん「罪と罰」も。。。
 物語の7割ぐらいがこういったある種の哲学的論争に費やされているので、とにかくこういったのに読みなれていないので、ページがめくられないめくられない。あまりにすすまないので、本当に海外の小説の読み方を自分は知らないんじゃないか、と思ってしまいました。

 そしてミステリ部分。ううむ・・・購入時の不安が的中。。。
 「罪と罰」は読んでないけど、なんとなく粗筋は知っている。そのフランス版・・・物語が進むにつれて、徐々に事件の謎が明らかになってくるんですが、もう完全に予想通りというか・・なので、ミステリ小説としてみた場合の密度は薄い。その一方で、小説としての主眼は事件そのものよりもその背景にある登場人物の苦悩があるのは明らか。この部分はミステリというより、巻末の解説にあった恐怖小説の要素という指摘が非常にしっくりきた。罪を犯す罪悪感によって少しづつ崩壊していく人間の描き方は結構迫ってくるし、ラスト部分で語られるクレマンの行動や叫びにもかんじる部分があった。

 なので自分にとってこの小説はミステリではなく哲学小説になってしまう。楽しめたかというと正直あまり楽しめなかった。でも本当にこの小説の正しい読み方ができたのかどうかもすごく自信がない。。
 でもそれはそれでこの小説の面白さなのかもしれない。この小説をどう楽しむかは読者に委ねられている、そんな感じもしたのでした。

 でも、物語のある意味象徴的な存在(のような気がする)であるクレマンの子供の存在感は出番も多くないが強烈だった。。。
 


採点  ☆2.6