『アイルランドの薔薇』(☆3.7)


まずはあらすじ。

北アイルランドの統一を謳う武装勢力NCFの副議長が、スライゴーの宿屋で何者かに殺された!宿泊客は8人―
そこには正体不明の殺し屋が紛れ込んでいた。やはり犯人は殺し屋なのか?それとも…。
宿泊客の一人、日本人科学者・フジの推理が、「隠されていた殺意」をあぶり出してゆく!
本格推理界に衝撃を走らせた期待の超新星の処女長編。


相変わらず忙しく、そして8月に人事異動で職務が代わり、毎日勉強の日々が続いております。
本はぼちぼち読んでいるのですが、なかなか記事にする暇が。
でもあまりにサボっていると、ほんとヤバイと思うので、短評になってもこまめに残さなければと思う今日この頃。

とりあえず立て続けの石持作品。
一区切りとなるのは、嫌いな人でもわりと評判のいい処女作でございます。

うん、評判のとおり面白い出来だと思います。
良くも悪くもこの人についてまわる、殺人に対する微妙な感覚のズレ。
処女作にも感じないわけではないけれど、設定の妙といいますか、いいところをついてきたなぁ。
この設定をもってこられたら、エピローグ部分にも納得せざるを得ないですな。
これじゃなかったら、こうもうまくいかんしね。

謎の人物や殺し屋の正体に関して言えばバレバレかなと思うのですが、それ以外の部分は破綻がないと思います。
フジの完璧っぷりをはじめとして、登場人物のキャラクターが妙に薄いのは、後々の作品を読んでる今となっては、もはや個性と納得するしかない?
同時にロジック重視の作品傾向は処女作にしてすでに固まっているんだね~、とそのこだわりに対してある意味感服。
ただ、後発の作品に較べるとロジックだけに突出してないぶん、読み物としての完成度は著作リストの中でも高くなってる気がします^^;;
でも逆にイロイロ変な作品を読んだせいが、まとまりすぎて面白みが・・・といったら、失礼ですよね。

これだけラストまで見せてると、座間味くんみたいに中途半端に続編が登場しなさそうなのもいいのかもしれませんな。
しかし「予告探偵」の続編が登場した今日この頃、著者は違えども・・・ということがあるのでしょうか。


採点  ☆3.7