『扉は閉ざされたまま』(☆3.8)


まずはあらすじ。

久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城の高級ペンションに七人の旧友が集まった。
(あそこなら完璧な密室をつくることができる-)当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。
何かの事故か?部屋の外で安否を気遣う友人たち。
自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳だけは疑問を抱く。
緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。
開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった…。 


篠田秀幸さんとならび、なぜか読み続けている石持さんです。
発売されたミステリランキングでは上位を占めたこの作品。でも『顔のない敵』や『月の扉』という前例もあるしな~。
なにより、猫の数が少ないし^^;;;

いや、面白かったと思います。
探偵役を務める優佳は、いわゆる天才型の探偵ではないんだけれども、観察力と発想力に優れてるといいますか。
裏を返せば、そんな些細な事からそこまで想像を膨らませられますなというタイプ。
犯人である伏見との学生時代をエピソードを見ても、「う~む、こういうコはきっついな~」と思ってしまう。
実際この優佳の存在は今までの作品に登場したキャラに良く似てるタイプ。
感情を理性で組み立てるため、逆に感情的な部分で抜けてたり、齟齬が生まれたり。

これまでの作品ではその部分が悪い方向に多々働いてたと思うのですが、この作品に関してはある程度それぞれのキャラを作っているので、まあこれはこれでありなんじゃないのかな、と思います。
まあ、ラストの優佳の行動はなかなか衝撃的というかなんというか、アレなんですが・・・
それまでの描写から、彼女はこういう行動を取る人なんだろうな、ロジック的には納得できました。
人として納得できるかは、これまでの作品と同様のような気がしますが^^;;;
そういう意味では、これはロジックを売り物にしている(ような気がする)石持作品の中でも上位にくるんじゃないかな~。

伏見が殺人を犯す動機というのは、最後の方で明らかになりますが、なかなか微妙ですな。
ふつ~はそこまで考えなくてもええやろ、という気もしますし、被害者に掛けた同情部分にも身勝手さがなくもないっす。
でも、これもまた伏見はこういう人物だよね、という最低限の部分は書かれてるような気がします。
実際傑作と呼ばれる小説群にも、動機に関しては人の自由というのがままあることですしな。

ただ、年間ベスト級かというと、トリック自体はしょぼいのが残念というか。
伏見の見落としたミスというのも、他の部分の気配りに対して初歩的すぎるのも気がします。
いいんですか、こんな男で?

最後に。読み終わってみれば「嘘いつわりの無い」タイトルは秀逸なのかも。
簡単に開くことが出来る密室。それが最後まで密室たりえるための状況を作り上げたアイデアはよく出来てると思いました。


採点  ☆3.8