『聖域』(☆3.4)



まずはあらすじ。

「安西が落ちた」好敵手であり親友でもあった男の滑落の報せに、草庭は動揺する。認めたくない事実を受け入れようとした瞬間、草庭の頭に浮かんだひとつの疑問
―安西はなぜ滑落したのか?
彼の登攀技術は完璧だった。山に登る上で必要な資質を、すべて具えた男だった。その安西が、なぜ?
三年前のある事故以来、山に背を向けてきた草庭は、安西の死の謎を解き明かすために再び山と向き合うことを決意する。

文藝春秋紹介より

一言コメにも書いてますが、とにかく忙しいっす。
本を読む時間が少なくて、読んでも感想をかく体力がなかったり。
この本も結局読み終わってから記事にするまですこし空いてしまいました。
ということで、しばらくは短い記事しか掛けないかも^^;;;

言い訳はともかく、
個人的にはわりとヒット率が高いと思ってる大倉さん。
一番はやっぱり「季刊落語」シリーズだと思うのですが、今回は山岳です。
大倉さんの山岳モノといえば、別の意味で異色だった『『川に死体のある風景』収録の「遭難者」がありましたが、今回はちゃんと(?)「山岳ミステリ」と銘打ってあるので、ちゃんと心構えをして読めるということで。

大倉さん自身、山岳ミステリに思いいれがあると語ってるように、その辺の描写が実に詳しい。
あまりに詳しいと置いてけぼりにされそうですが、そのへんはバランスがいいというかあんまり詳しくなくてもわかるのが安心。
事件そのものも、犯人の意外性はあるものの、基本として雪山での出来事に絞ってあるので、すっきりしてますよね~。
逆にすっきりしてるぶん、食いつきは少し足りないかも。
多分事件のそのものの謎よりも、山岳家の心情やそこに生まれる友情や葛藤を描きたかったから?と思うかも。

犯人の意外性と書きましたが、意外性というより唐突に近い。
確かに伏線らしきものは散在してるものの、結局○○が犯人だったら、それまでの犯人の人物像とすこしずれてこないか?とも思ってしまうし、最後の犯人の選んだ選択肢にもやっぱり同じ疑問がよぎってしまいました。

大倉さんの作品としては可もなく不可もなく。
山岳ミステリとしてはいろいろな意味で、折原一さんの『遭難者』がインパクトあったかもしれないっすね^^;;
もっと変化球的なミステリを読みたかった気もするし、山岳ミステリではなく山岳モノを書いてもよかったのではとも・・・。



採点  ☆3.4