Rのつく月には気をつけよう(☆3.6)


まずはあらすじ。

 
湯浅夏美と長江高明、熊井渚の3人は大学時代からの呑み仲間。
毎回誰かが連れてくるゲストは、定番の飲み会にアクセントをつける格好のネタ元だ。
酔いもまわり口が軽くなったところで盛り上がるのはなんといっても恋愛話で―
小粋なミステリー短編。 

amazonより

前回読んだ連作短編集では、パラレルワールドの日本を舞台にしたミステリが、石持さんと相性が悪い私でも楽しめました。
そして今回もまた連作短編集。

大学時代からの飲み仲間である、長江・熊井・夏美の三人。
長江の自宅で開かれる飲み会には、料理とお酒とゲストが一人。
そんな席で語られる物語の裏にある真実を、「悪魔的な頭脳を持った男」長江が解き明かす。

正直第1話を読んだときは、「う~ん、これは^^;;;)」と思いました。
ライトな語り口から解き明かされる真相の残酷さ。動機と行動という点で若干強引かな~という気もしたんですけど、そこを割り引いたとしても、この場でそれを言うか、と思ってしまう。
石持さんとの相性の悪さの最大の原因、登場人物の行動にイマイチ倫理観みたいなものが欠如してる印象を受けてしまうことがあるのですが、今回もそんな感じ。

でも、まあ話自体は悪くないし、短い短編集だから取り合えず最後まで、と読み続けたのですが、最後はちょっとホロリとしてしまいました。
飲みの場で語られる謎はすべて恋愛と食べ物にまつわるお話ばかり。
物語に彩りを添える小道具の美味しさが私の読書欲(食欲)を促進。謎そのものもシンプルな構造で、短編の長さにうまくマッチしてる。
正直、長江の発想がやや強引かな~という気がせんでもないし、謎に関わる登場人物の行動心理にも「う~ん」というところがなくもなく。
ただこれまでの苦手の作品群に比べると、ワリとライトなエピソードが多かったせいか、意外にすんなり納得できた部分もありましたね~。

そして短編集全体としての仕掛けも効いてると思います。
登場人物達の関係がこういう方向にいくんだろ~な~、と思わせておいて最後にサクッと転がされました。
表現としてはギリギリ(わりと最初の方に疑ったんですけど、でも途中から気にしなくなっちゃった)だけれども、着地点がキレイに決まってるので文句はつけない。というよりもホロリときてるわけだし^^;;(でも泣かなかったぞ)

まあ、キレイにまとめ過ぎてる感はあるし、そういった部分で現実との齟齬は相変わらずあるのかもしれない。
読み応えに関しても不満がある人もいるのかなとは思ったり。
でもまあ、気負わずに読む分には十分面白い作品だと思います。
それにしても初期の頃にはこういう作品も書く人だとは思わなかったな~。


採点  3.9