『天帝の愛でたまう孤島』(☆4.3)


まずはあらすじ。

厳然たる!言語と!衒学の!限界突破!
お見事としか言いようがない。
(魔夜峰央氏推薦!)

「莫迦な、あれは、あれは死神仮面だ!!!!!」
『十角館の殺人』と『孤島パズル』と『そして誰もいなくなった』を鞄に入れて、二泊三日の超豪華避暑島合宿。
もちろん、密室連続殺人劇の幕が上がる。
犯人はアカマントアオマントトクチサケニンゲンシニガミカメン!?
古今東西の閉鎖的状況を大胆不敵に参照するオタク系本格、早くも3冊目。
急いで読まなきゃ、まほろに追いつかない。
うげらぼぁ!!
(大森望氏推薦)

名門勁草館高校・吹奏楽部と生徒会の面々は、子爵令嬢修野まりの誘いで、孤島にそびえる「天愛館」で優雅なバカンスを過ごすはずだった。
しかし次々とメンバーが姿を消し、連続密室殺人劇の幕が上がる。
犯人は血に飢えた死神仮面!? 
事件の謎を追う古野まほろに突きつけられた、過酷な真実とは……!?

yahooより

『天帝のはしたなき果実』 (☆1+3) 推薦者:有栖川有栖 
『天帝のつかわせる御矢』 (☆3.6) 推薦者:竹本健治

笑激のデビュー作からまだ10ヶ月。
前作では予想外なまとも(変な小説であることは間違いないが)っぷりに自信をつけたのか、著者の言葉がふるっている。

三部作、というのが夢でした。
つい六日前までは、果たすべきそれが命題だったからです。
終わりました。
そしていまこそ勅許を得、僭越ながら申し上げましょう。
この古野まほろ、正統なる後継者、であります。

なんの後継者???
って突っ込みたくなりますよね~、いやもちろん本格のなんでしょうけどね、ねえ^^;;;
大体こういう時ってはずれるんだよな、「うげらぼぁ」だしなあ。。。

本屋で見かけ即買いはした(してしまった?)ものの、なかなかねえ・・・。
手元には『女王国の国』も『俳風三麗花』もあるしな~。

パラ・・・(相変わらずルビがすごいねえ。。。)
パラパラ・・・(なんだこの館の部屋の名前、覚えられねえよ。。。)

(この頃、『女王国の城』よりもこちらを読んでいるのを邊瑠子様より叱られる)

パラパラパラ・・・(おお、密室だ!!しかも犯人も死体も消えてるぜ!!)
パラパラパラパラ・・・(つぎはどうなるんだ?おお、また密室!!)
パラパラパラパラパラ・・・(なんじゃこの館・・・○○城かい!!)
パラパラパラパラパラパラ・・・(おお、ついに解決編!!うがあ~、そんなに堂々とヒントが!!)
パラパラパラパラパラパラパラ・・・(この動機は絶対わかんねえな。ま読者への挑戦も犯人当てればよしとなってるし)
パラパラパラパラパラパラパラパラ・・・(ふう、エピローグか・・・うげらぼぁ!!)
パタン・・・(読了)

で、感想。
お、面白いじゃな~ぃ^^(アイン風by北斗の拳
どうしたんだ古野まほろ、この化け具合は???
いや基本的なルビや描写具合はアノはしたなき第1弾とそんなに変わってない気もするから、こっちが慣れたのか^^;;;
でも間違いなくルビの煩雑さはシリーズが進むごとに減っている。
これはいざ発売された本を見た作者が、自分が想像してた以上の読みにくさに気づいたからだったりして^^;;

まあ、それまでは枝葉のところにかなり懲りすぎて、新本格の傍流というよりは虫太郎の亜流という感じだったけれども、ここに至りもっとも正統派によった本格派。
隔離された孤島、そして館。跋扈する怪人。巻き起こる連続密室殺人。莫大な財宝を在り処をを示すとされる歌詞の謎。
古典的な本格探偵小説のガジェットを詰め込みつつ、物語のテンポ、その見せ方が上手いので読んでて苦にならない。
デビュー作から比べるとどうしたんだっていうぐらい進歩。
確かに登場人物同士の会話の微妙な空気は相変わらずなものの、作者自身がやっと彼らの活かし方になれた気がする。
とにかく最初から最後まで一気に読めた。

正直トリックに斬新さはない。むしろ「古今東西の閉鎖的状況を大胆不敵に参照するオタク系本格」という大森さんの推薦文がピッタリはまる印象。
どこか見たことのあるような気がする。特に綾辻以降の新本格からの影響はプンプンするのだ。
特に屋敷に関しては中○青司のご先祖様が設計したんじゃないかというぐらい奇天烈。
そんな微妙なところのチープさが古野まほろの文章にしっくりきてるから不思議だ。

そして真相。
ここまで犯人に対するヒントが堂々と提示されてたら、ほんと分からなかった自分が莫迦みたいだ。
まほろが犯人を告発した瞬間、思わずページをパラパラパラパラと捲り直す。
うげらぼぁ~~~~~~~~~~。
動機に関しては微妙に理解しにくいが、その手段方法の異様さが強烈。
石持さんあたりがこれ使ったら怒っちゃうんだろうな~、と思うもののこの異形な世界観の中だと意外に違和感なし。

ううむ、なかなかにまっすぐな小説を書いちゃったなと思ったエピローグ。
またしてもうげらぼぁ~~~~。
ここで初期の東野圭吾やシリアス系赤川次郎かといいたいぐらい、80年代青春ミステリの王道をかましてくるとは。。。
これはちょっと想像してなかったな~。
そして三部作と銘打った三作目にこのネタをやるのか。
これで終わったら、ちょっと切なすぎる。
というか、結局あの人外はどうなるのよと^^;;;

正直、ダメな人はダメかも知れないとおもいつつ、予想外にまとまったストーリー展開は個人的に十分楽しめたし、オチそのものは嫌いじゃなかったな~。
とはいっても、やっぱり薦めにくいな~。
シリーズ通してじゃないと楽しめない部分があるうえに、その最初があれだからな。。。はふぅ。。。
ま、とりあえず『ぐるぐる猿と歌う鳥』を読んでない理由にある大作群にコレが入ってないのが間違ってます、ということで(笑)。


採点  4.3