~本楽家協会タイトルリレー~『ぐるぐる猿と歌う鳥』(☆4.4)  著者:加納朋子

楽家協会のご長寿イベント、「本のタイトルリレー」。
現在2週目突入中、学校が忙しくやや開店休業気味の当ブログ。
協会員にはあるまじき状態で、リレーもぼんやりと眺めていたら・・・

いきなり回ってきました!!
それも恋敵である月野さんから!!
お題は『アメリカの鳥たち』
・・・短え!!タイトル短え!!
さすが、月野さん!!恐るべし、月野さん!!何て嫌がらせだ、月野さん!!

なんてことはち~っとも思ってない心の広い私。
いそいそとお題を考える。

まず思い浮かんだのが『アメリカン・サイコ』(ブレット・イーストン・エリス作)。
コテコテのサイコホラーの名作(らしい)。
前から読んでみたかったし、図書館にもあるし、この機会に読んでみよう
・・・ここで、ふと気づく。
短え!!タイトル、短え!!これじゃ月野さんと同類だ!!いやそれ以上に酷いぞ!!
これじゃあ私が八つ当たりしてるみたいじゃないか!!

ということで、急遽「アメリカ」「鳥」で検索してみる。
そこで琴線に触れたのが『鳥と砂漠と湖と』(テリー・テンペスト・ウイリアムズ)。
本の紹介文では

鳥と土地と女たちの伝説(サーガ)。大塩水湖の増水が鳥たちの住処を奪っていった頃、母のがんが再発した…。
本書は鳥と土地をめぐる生態学的な観察記録であると同時に、数世代にわたる家族の生と死と愛の物語でもある。

うん、これは面白そうだ!!
ということで、早速借りてくる。
しかしこの本結構長い。その上、読書予定の棚には『女王国の城』も『俳風三麗花』も「はしたなき」第3弾も控えている。
だからなかなか進まない。とりあえず、読み終わった加納朋子の『ぐるぐる猿と歌う鳥』の記事を書くか。

・・・・・鳥じゃん!!

やはり神様はいるのだ!!日頃の善行の数々をちゃんと見ていてくれたのだ!!
結構みんな読んでるとか、いまさら私が記事を書かなくても評判いいなんて関係ない!!
なぜならこれは神の思し召しなのだから!!

ということで、お題は『ぐるぐる猿と歌う鳥』に決定!!


まずはあらすじ。

五年生に進級する春、森は父親の転勤で東京から北九州へ転校することになった。
わんぱくで怪我は絶えないし、物は壊すし、友だちは泣かせるしで、いじめっ子の乱暴者というレッテルをはられていた森の転校を聞いても、先生どころかクラスメイトのほとんど誰も残念がってはくれなかった。
そんな森だったが、引越し先の社宅の子どもたち―ココちゃん、あや、竹本兄弟、パックとは不思議に気があった。彼らは森をまるごと受け入れてくれた。
しかし森は次第に感じていた。この社宅には何か秘密がある。もしくは謎が…。

yahooより

実に久しぶりのミステリーランド、そして加納朋子
別に加納さんが嫌いではない。いやむしろ好きな作家の部類に入る。
しかしながら、なぜか最近とんと読んでなかった。
それだけに好評な本作に期待をこめる。

いやあ、面白かった。
前回のミステリ配本がアレだっただけに、これぞミステリーランドという作品にただただ幸せ。
不思議なプロローグから始まり、舞台は北九州へ。
広島弁も若干(?)通じないことがあるのですが、それ以上に九州弁はわからなかったりするのではないでしょうか。
もちろん我が家の本籍地である長崎県五島列島の方言ほどではないものの、読み終わった今でも微妙に意味がわからない台詞があるのはご愛嬌^^;;

個人的にミステリーランドを楽しめる第1歩は、登場する子ども達にどれだけ感情移入できるかがある。
その点で、これはバッチリ♪この感覚は倉知さんのミステリーランド以来かも。
主人公のシン、腕白坊主にして問題児。でもこういう小学生って往々にして大人視線から見た問題児だったりするもんだ。
もちろん例外もあるが、シンはそうじゃない。きちんとした彼にとっての理屈があるからだ。
それは好奇心だったり、正義感だったりいろいろだし、もちろん大人からしたら・・・的なところもある。
でも子どもなんてそんなもんだろ。そういう経験が子ども大人にしていくんだと思う。私だってそうだ。
なによりシンは反省することができる。だから読者はシンを応援したくなる。
なんだかんだと彼を信じるココちゃん、あや、竹本五兄弟を応援したくなる。

そしてパックだ。
この名前、やっぱりシェークスピアのアレが下敷きにあったりするのかなと思ったり。
それはともかくこのパックもまた自由だ。
そしてその自由は子ども達の揺ぎ無い信頼によって守られている。
物語に進むにつれて明らかになる、パックの謎。
正直なところ強引な部分はあるし、違和感はなくもない。実際にはパックがパックのように生きることは無理だと思う。
しかしながらそこには夢がある。子ども達なら誰もが一度は描いたと思う夢が。
そして大人になった私達には、その夢に終わりがあることを知っている。
シン達もまたいつか夢の終わりに直面するのだろう。作者もまた作中で匂わせている。
この優しさと厳しさのバランスが小説としての後味の良さに繋がっている。

物語のラスト、彼らは坂道を駆け抜ける。
仲間がいる今を楽しむために。
それが彼らの特権だから。
そして読者は切に願う。もう一度彼に会いたいと。

ミステリーランド屈指の完成度。
倉知さん、太田さんに匹敵する出来。
子どもにも、むかし子どもだった大人にも読んで欲しい本だ。

さてさてタイトルリレー、次なるお題は『ぐるぐる猿と歌う鳥』。
フレーズは多いが、意外と難しいかも。
またしても鳥か、それとも。。。

とりあえずタイトルリレーの課題はクリア!!
あとは国家試験&邊瑠子杯争奪バトルに邁進するのみ。。。


★次回お願いするかたにはこっそりゲスブへお持ちいたします。
 現在までのリレー状況はしろねこさんのこちらの記事が便利です
  →http://blogs.yahoo.co.jp/one_zero99/51795123.html


採点  4.4