『人柱はミイラと出会う』(☆3.4)


留学生リリー・メイスは、日本で不思議な風習を目にした
。建築物を造る際、安全を祈念して人間を生きたまま閉じ込めるというのだ。彼ら「人柱」は、工事が終わるまで中でじっと過ごし、終われば出てきてまた別の場所にこもる。ところが、工事が終わって中に入ってみると、そこにはミイラが横たわっていた。
黒衣、お歯黒、参勤交代―。パラレルワールドの日本で展開する、奇っ怪な風習と事件の真相とは。

yahooより

ぼちぼちと相性の悪い石持さんでございます。
特にわりと現実を舞台にした作品は、物語の閉じ方に不満を感じるものばかりなのでねえ。
これはどうなんでしょう。

で、第1話からびっくり。
予備知識が無い状態で読んだので、ついつい人柱の話を本当だと思っちまうところでした^^;;
むむ、これはパラレルワールドというか非現実な短編集か。
となると、比較的相性の良かった『BG、あるいは死せるカイニス』に近いのか。
となると期待が持てるかも。

人柱・黒衣(くろこ)、お歯黒、厄年、鷹匠ミョウガの物忘れ、そして参勤交代。
かつて日本にあったもの、あるいは伝承として語られたものを現実として甦らせたパラレルワールドで起こる不思議な事件。
なんとなく山口雅也の『日本殺人事件』なんかを思い出すわけですが・・・。

いや、今までの石持作品に比べたら全然好きだ。
それぞれが短いというのもあるのだろうけれど、後味がそんなによくない作品が少ないからだと思う(鷹匠の話には石持節がちらっと見えるが)。
あまりそれぞれを捏ねくらずにシンプルに描くことによって、物語のベタさにピッタリはまった気がします。

ただしシンプルすぎて読み応えは薄いかも。
元々心理的な部分の組み立てが下手(単に私と相性が悪いだけ?)なだけに、たんなる短編集ではなく連作短編集と見た場合・・・っていうか連作短編集なんですが、トータルとしての1冊の本としては満足感は少ないし、設定の妙によるユーモア的要素にしても悪くはないのだけれど生かしきれてない感じ。
少なくとも、もう少しリリーと東郷の恋話を盛り上げてくれよな~と思ったりするのは贅沢?

個人的には短編向きな作家さんなのではないかと密かに思ってたりするのですが、やっぱり相性なのかなあー。
もしくは、この作品や『顔のない敵』のような連作系ではない、バラバラな短編集ならいいのかも。。。
いや、評判のいい『アイルランドの薔薇』が積読本になってるのでそっちに手を出してみるかな~。

う~む、未だ石持氏をつかめず。。。
これはそろそろ限界か。。。


採点  3.4



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