『亡霊(ゴースト)は夜歩く ~名探偵夢水清志郎事件ノート~』(☆4.0)


亜衣(あい)たち三つ子の通う虹北(こうほく)学園には、不気味な伝説がある。
『時計塔の鐘が鳴ると、人が死ぬ』。学園祭を前にして突然鳴りだした鐘。
亜衣は「亡霊(ゴースト)」と名乗る者からメッセージを受けとる。校庭には魔法円が描かれ、空から机が降る……。
それなのに名探偵・夢水(ゆめみず)"教授"ときたら、福引大当たりの温泉旅行に行くなんて!?

講談社HPより

第1弾、『そして五人がいなくなる』が大ヒットだった夢水清志郎第2弾。
『青い鳥』文庫に拘って借りてみようと思いつつ、近くの図書館では借りられていたので講談社文庫版で読む。
それにしても「青い鳥」版は予約も入ってたのに、こちらの方は借りられていないという現象にもちょっと驚き。
子どもコーナーと一般文庫コーナーではこんなに違うものかと改めて気づく。

で、本編。
総じて第1弾ほどの素敵なインパクトはないけれども、別につまらないわけじゃない。
いや面白い♪

ミステリとしての濃さでは第1弾にもまして緩い。
こんなに都合よくいくのかという微妙なトリック(←似たようなことをした経験があるような気がしますが)、見当のつきやすい犯人などなど。
大人向けに発表されたのなら物足りないかな~と思うのかもしれんが、青い鳥・そして小学校高学年以上対象本としてみれば、やっぱり素敵な本でしょう。
このシリーズに登場するトリックはどこかで見たようなものを易しく作り直したトリックが多い。
これは間違いなく確信犯。
でもその「どこかで見たような」ものを知らない子ども達が読んだらワクワクするはずだ。

だからといって大人が楽しめないわけじゃない。
むしろ今だからこそ犯人の動機について心に刺さってくるものを感じるのかもしれない。
あの頃の自分はいったいどう思って生きてきたのだろう。
そして今の子ども達はどう思って生きてきたのだろう。
そんな大人と子どもの視点の交錯が、はやみねさんの優しい筆致により夢水清志郎の言葉となって物語を包み込む。

そしてもう一つ。
亜衣とレーチの微妙な関係がとてもいい。
お互いの気持ちが微妙に交錯しあい、読者を照れつつもヤキモキさせ、初々しさ炸裂のラストのダンスシーン。
ええのう、若いってええのう。
ほんとこういうベタな展開におっさんは弱いのです。
こういうシリーズものってたまにこういう事があって、次をワクワクして読むといねえ!!という展開があってヤキモキするのですが(←その代表が内田康夫『平家伝説殺人事件』だ!!)、期待してもいいですか^^

ああ、それにしても
大人になって失たものにふと気づく。
そんな言葉がお似合いの、ほろ苦くて甘酸っぱい、大人も子ども楽しめる本だったと思う。


採点  4.0