『そして五人がいなくなる ~名探偵夢水清志郎事件ノート~』(☆4.4)

夢水清志郎は名探偵。表札にも名刺にも、ちゃんとそう書いてある。
だけど、ものわすれの名人で、自分がごはんを食べたかどうかさえわすれちゃう。おまけに、ものぐさでマイペース。
こんな名(迷)探偵が、つぎつぎに子どもを消してしまう怪人『伯爵』事件に挑戦すれば、たちまち謎は解決…するわけはない。
笑いがいっぱいの謎解きミステリー。

講談社HPより

私とはやみねさんは、案外に相性がよろしくない。
別にこれはダメだ・・・という作品はないのだけれども、『僕と先輩のマジカル・ライフ』以外はピンとこない事が多かった。

で、この作品。
名探偵夢水清志郎事件ノート第1弾。
『バイバイスクール 学校の七不思議事件』以来の講談社青い鳥文庫
借りるのが少し気恥ずかしい。一緒に図書館に行った母親には思い切りつっ込まれるし。。。

でも、そんな苦労(?)を忘れるぐらいツボな作品でした♪
いやあ、ジュブナイルはこうじゃないと、と思うことしきり。とにかく楽しい文章がいい♪
語り部たる岩崎三姉妹と夢水清志郎の出会いを描いた冒頭。
隅々まで行き届いた単語選びのセンス、子どもだけじゃなく大人の私もニヤリ^^
そんな中でもきちんとヒントを散りばめられた本格へのこだわり、これがまたいいのよ!!
適度な謎のレベルに、子どもとたちも(大人たちも)やられた~と思うことでしょう!!

そしてまあ、登場人物の魅力的なこと!!
主役たる夢水清志郎のおとぼけっぷりももちろん最高。
それぞれの個性はこれからという気がしないでもないが、おおっ中学生だ!!という感じの岩崎三姉妹。
本当におとなが書いたのか?と思わせるぐらい中学生として違和感ないっす。
夢水清志郎と張り合う上越警部がまたチャーミングだ。
気に入らないことがあるとすぐに拳銃に手が伸びる(一度などは本当に発砲してるし)パンクかつありえない性格が、ジュブナイルの世界にぴったり。
ラストの去り際を含めて、ちょっと銭形のとっつあんを思い出さて、いいのだよ~。

なぜ子ども達が誘拐されたのか?どうやって衆人環視の中で消えうせたのか。
この辺のトリックはちゃんと注意して読めばストレートに解けるレベルのさじ加減。
ネタが分かったときには、「そうそう、なんかおかしいと思ったんだよな~」とあたりが悔しさ半分、ヤラレタ快感半分♪
ミステリって、こうやって読むんだよというはやみねさんの優しい手ほどき(?)を受けてる感じ。

大人の読者、感のいい子どもなら犯人の正体や動機に察しがつく。
でもそれが読後感のマイナスには繋がらない。
それはどこもまでも優しいはやみねさんの視点があるからだ。

「今の子どもと昔の子どもと、どっちが幸せだと思う?」
「どっちも幸せだよ。子どもは、いつの時代だって幸せなんだ。
また、幸せでなくちゃいけないんだ」

に代表されるフレーズには思わずうんうんと共感させてもらえます。
終わってみれば悪人無しで、最高にベタで最高に気持ちよいラストに出会える。
やっぱりジュブナイルはこうあって欲しい。
そしてなにより読んでて楽しい本はが一番いいんだよ♪といいたくなる本。

明日続編を借りに行かなきゃ♪


採点  4.4