『収穫祭』(☆4.5)   著者:西澤保彦


1982年、8月17日、夜。暴風雨の首尾木村北西区で、ほとんどの村民が虐殺される大量殺人の発生が警察に伝えられる。
しかし悪天候と現場に通じる2脚の橋が流れたため地区は孤立、警察の到着は翌日になってからだった。
かろうじて生き延びたのは中学3年の少年少女3人と彼らが通う分校の教諭ひとり。被害者は、3人の家族ら14名で、そのうち11人が鎌で喉を掻き切られていた。
不明な点もあったが、犯人は、事件当日、逃走後に事故死した英会話教室の外国人講師と断定された―。
そして9年後、ひとりのフリーライターが生き残った者たちへの取材を開始するや、ふたたび猟奇的な殺人事件が起こる。凶器はまたもや鎌だった…。
著者渾身の1944枚、傑作『依存』を超えた書き下ろし長篇ミステリ。

講談社HPより

西澤さんの最新作・・・というより、西澤さんを読むこと自体久しぶりだったような(ミステリランド以来?)。
発売当初の新聞広告で、「うわぁ~これ好きそう」(←変態)と思いつつ、分厚さとお値段に図書館のお力を借りてしまいました^^;;

いやあ~、なんじゃこりゃ。
過疎の村を舞台に、冒頭から(←誇張なし)繰り広げられる大量殺戮。
生き延びた少年少女を襲う過酷な運命。そして再び繰り広げられる惨劇。

この分厚さと濃厚さは今年の諸作の中でもトップクラス。
動機の理解不能っぷりとどんでん返しでは今年のベストかも。。。
そしてこの後味の悪さといったら・・・

まあ、とにかく描写の濃厚さはすごいっす。
いや、大量虐殺じゃなくてエロ描写がね^^;;
虐殺の場面も十分グロいが、綾辻行人『殺人鬼』に比べたらね、まだ耐えれる。
しかしこのエロは・・・。とにかく終わってみれば中心人物に殆どまともな人がいないだけに、エロの展開もまともな事が少ない。
特に第2部の後半、いくらなんでもあの情欲的な展開は理解するほうが無理ってもんで。。。

そしてある意味変態度倍増の第3部にて、事件の真相が明らかに。
犯人はある程度想定内という気がしますが、それまでの濃厚な展開の中に散りばめられた伏線の収束の仕方が、豪快かつ緻密。
動機の面からいえば、もう「はあ~そうですか~」というだけでございますが、それを理解した上で事件の全貌を明らかにしてしまう探偵役(?)の思考回路が素敵過ぎます。実際細かく読んだら微妙な表現の一つもありそうですが、あまりに濃厚な内容なので読み返す気にはなりません。これも西澤さんの計算通りなのか!?
ああそして、この第3部の終わり方もほんと救いようがないですな~。

あれ、事件の全貌が明らかになったはずなのに、まだ2部も残ってるぞ???
パラパラパラ・・・・

え~~~~っ~~~~~~


すごいです。まさかこんなどんでん返しがまっているとは!!
それまでの(横溝+島田荘司)÷綾辻「殺人鬼」な展開が、一気に西村寿行大藪春彦か的な世界に!!
いや、いくらなんでも○○さんが○○さんだなんて・・・豪快というか大法螺というか・・・。
小島よしおばりに、「でもそんなの関係ねぇ」です、ほんと。
さらには○○さんが○○さんに遺したメッセージが、また救いが無い。
なぜそこまでするのだ○○さん。もはや逆恨みとかそういう問題を超えてますがな!!

度肝を抜いた第4部のあとに残った最終第5部。
事件中にも登場人物がたびたび触れ、そして最後まで残った謎が解決されます。
そしてタイトルの意味も・・・。
ああ、最後まで徹底してダーク、救いなし。
ここまで後味の悪さを残すのも久しぶり。『空白の叫び』(貫井徳郎)以来?

それでもなお強烈なリーダビリティと印象を残した作品。
西澤さんのベスト級、そして今年度でも上位ランクを伺える作品。
本当に今年は日本ミステリ大収穫祭ですな~。


採点  4.5