『天帝のつかわせる御矢』(☆3.6)   著者:古野まほろ


この愛すべき異形さは触発的なのだ。――竹本健治氏推薦!
超Q級豪華寝台列車で密室殺人劇が幕を開ける……

戦下の大陸を逃れ東京へ向かう超豪華寝台列車、環大東亜特別急行あじあ』。
乗客16名のなかに世界的間諜『使者』の存在もあるという。荘厳かつ絢爛を極めた客室で公爵夫人のバラバラ死体が!
当該列車に乗車していた頸草館高校3年古野まほろと柏木照穂の推理は?

yahoo紹介より

久々にとてつもなく強烈だった第35回メフィスト賞『天帝のはしたなき果実』でデビューした古野まほろ
そして早くも第2弾が登場してしまいました。

何しろミステリブロガー仲間の中でも、私とゆきあやさんしか犠牲になっていない、まさにいわくつきの作品。
今回は竹本健治氏の推薦付だけれども、前作も有栖川有栖氏の推薦文がついてたから信用できない。

で、ページを開くとさっそくの古野節。
序章一行目からいきなり擬音。ぐおん。
次のページにも擬音。ぷしゅう
そして今回の舞台となる、環大東亜特別急行あじあ』神武号の登場だ。
ちなみにお馴染み(?)のルビで、スーパエクスプレスエイジァヒズマジェスティエンペラージンムと書かれている。
はふぅ。。。

そして第1章。  

ばりばり、ばりーん!
どどどど、どおーん!!

戦争だ。前作の事件の後満州に逃避行した古野くん。(なぜ逃避行したのかは前作が原因らしいが忘れた^^;;;)
満州では東と西に別れて戦争中。
で再び日本に帰ります。
迎えに来た柏木くんとともに乗った特別急行で殺人事件に巻き込まれます。

前作の世界観と流れを受け継いだスパイ小説みたいなはじまり。
でも中身はバリバリの本格。
麻耶さんの某作品を思い起こさせるような秒単位のアリバイトリック炸裂です。

はっきりいって前作より全然読める。
個性ありまくりの文体、奔流しまくりのルビは相変わらずだが、怖いもの知らずだったデビュー作に比べると意味不明さは控えめ。
読みにくいということはほとんどなかった。
なにしろ中盤で登場人物の一覧が登場してくれるからありがたい。
600ページの長編で殺人は2回しか起こらないわりには、きちんとテンションは保ってる。

特にクライマックスの大推理合戦は中々に熱い。
なにしろ七人のにわか探偵が自分の推理を披露しまくり。
トンデモ推理にブチきれるお嬢様がいるは、クリスティの「オリエント急行~」のトリックを流用(これはどうなんだろう)したりと、なんでもあり。
でもやってくることは超緻密。
無駄無意味の衒学趣味にうんざりだった前作も意外と本格的要素はまっとうにとりこんでるのよね。
そーいった部分が薄いぶん、ほんと本格になってまっせ、これ。

そして前作で私とゆきあやさんを脱力(激怒?)させたラストのトンデモ世界観。
またしてもあります。
前作で正体を現した人外、今回も颯爽と登場(笑)。
でも、はっきりいって予想できるぶん、フフンと読める。

細かいところは前作のストーリーを知らないと混乱する部分はあるものの、単体で読んでもそんなには問題ないかな。
つ~か、前作なんてとてもススメラレナイしね~(ねえ、ゆきあやさん)。
まあ、はふうにはふうとはふうってしまわない人は挑戦してみても。。。

おそらくはまだまだ続くこのシリーズ。
なぜ人外がそこまでまほろくんに固執するか分からないけれども、バトル宣言も炸裂してるしね。
とりあえず次の作品も読んでみることになるでしょう。

それにしても、これはほんとだれも読んでくれないんだろうな~。
ゆきあやさんもギブアップ宣言してるし。。。
どうでしょう、iizuka師匠、竹本氏の推薦ということで・・・・。



採点  3.6