『ガール』(☆4.3)



きっとみんな焦ってるし、人生の半分はブルーだよ。既婚でも、独身でも、子供がいてもいなくても…。
さ、いっちょ真面目に働きますか! キュートで強い、肚の据わったキャリアガールたちのお話を5つ、ご覧あれ。 

yahoo紹介より

『マドンナ』を読み図書館に速攻予約してはや半年以上。
やっと順番が回ってきました。『六とん3』に続いて読むには眩しすぎるお話。

いやあ、こりゃ面白いわ。
30独身男がこんな事を言ったら大ブーイング受けそうですが、これに思わず共感しちゃう同世代の女性はたくさんいると思うな~。(あの人やあの人や・・・←自粛)。
男視点の『マドンナ』も面白かったけど、女性視点のこちらの方が生き生きと描かれていると思うのは気のせい?
というかこんな小説を男性作家が書いた事がすごいですわ。

基本的にはワンパターン。
でもそれが気に入らないぐらいに考え抜かれた、それでいて軽妙な構成と、とにかく悩みながらそれでも前を向いていく女性たちがキュートかつかっこいい。
微妙にテーマをかえつつも、それぞれにきちんと共感できるストーリーばかりで、思わず主人公達を応援したくなりました。
個人的には『マドンナ』よりこっちの方が好きだなあ~。(『マドンナ』も面白かったけど^^)


『ヒロくん』

営業課長に抜擢された女性の元に配属されたのは、昔気質が抜け切れない年上の男性だった。
近年の企業における女性の立場向上の裏にはこんな物語はたくさんありそうですよね。
でも団塊の世代の大量退職でそんな事も少なくなるんでしょうか。
何事にも鷹揚に構える旦那との対比がアクセントとなって、主人公の心情の揺れが上手く描かれてますね~。
いやあ、こういうオッサンはぶん殴りたくなります(笑)。


『マンション』

かつて不動産系の仕事をしていた時に、1~2LDKを購入する独身女性の方が結構いるのに驚きました。
一方でやっぱりマンションを買うということは独身女性だけでなく、どんな人にも大きな買い物。
そんなモデルルームで会社の人間と出会ったら、お互いの腹の探りあい・・・みたいな光景はよく見ました(笑)。
そういった意味では非常に楽しめたのですが、秘書課の女性と役員の上司のキャラはちょっと出来すぎ?


『ガール』

さすが表題作というか、収録作の中では1,2の出来栄えだと思います。
確かに年齢不詳の女性を見ると、年甲斐も無くと思ってしまいますが、これを読んだ事ですこし視点が変わるかもしれません。
ヒロインだけでなくその上司も、そして取引先のOL達もそれぞれの社会の中で、いかに女性であろうかと悩んでるすがたが、すごく伝わってきますね。
ただこの発想の根本にあるものは、いつまでも一人の女性として見られたいという男性にはなかなかない女性の個性。
それをここまで前向きに素敵に描いてしまう奥田さん、すごいな~。
いつまでも『ガール』でありたい、至言でございます。


『ワーキング・マザー』

出来でいえば表題作、個人的にはちょっとだけこっちの方が好き。
仕事上での揉め事もパターンの安心さで読ませるものの、やはり子供との触れ合いの場面がいいなあ~。
子供のために鉄棒やキャッチボールを練習する主人公がいいんだ、まだ。
シングルマザーに戸惑う会社の人たちの心情もすごく共感できる部分もあるし、物語の閉じ方も違和感無い爽やかでいいっすね。


『ひと回り』

ひと回り違う異性にほのかな想いをというのは、男女共通のものでしょうね~。
でもそうしたときにどうするかは、結構違うのかもしれません。
そうなったときにどう思うのか、どうするのか。
それが男女で微妙に違うのかもしれません。
なにがどう違うのかと言われると、うまくいえませんが、その微妙な違いがこの小説にはある。
そういいたいだけですが(笑)。




採点  4.3