『本陣殺人事件』(☆4.0)



柳家の当主賢蔵の婚礼を終えた深夜、人々は悲鳴と琴の音を聞いた。新床に血まみれの新郎新婦。枕元には、家宝の名琴「おしどり」が…。
密室トリックに挑み第一回探偵作家クラブ賞受賞。

yahoo紹介

たしか2月終わりの一言コメントに、「来月は古典強化月間」といってからはや2ヶ月。
やっとそれらしい本の更新。しかもいまさら紹介する必要あるのかという、横溝正史の名作でございます。

さすがに読み返すのはウン年振りでしたが、今読んでも一気に読み通せる面白さ。
雪の離れで無残な死体で発見された新婚初夜の夫婦。
闇夜を切り裂く琴の音とともに現れた密室。
そして再びの惨劇。。。
花嫁の父が打った電報
金田一氏ヲヨコセ」
そして現れる伝説の名探偵。

終戦直後に書かれたにも関わらず、本書は今に通づる本格探偵小説の要素を限りなく含んでいる。
その中でもやはりインパクトを残すのはやはり琴の音と密室トリック。
実はこのトリック、初読時の時にすでにトリックと犯人を知っていました。
学研かなにかの科学まんがで、他の名作ミステリのネタ晴らしとともにこの作品の密室トリックも見事解き明かされてました。
今振り返ると噴飯物の本ですが、それを割り引いてもその密室トリックは衝撃でした。
機械トリックの極み、現実性に乏しい(実際二階堂氏が自作の中でトリックの不備を指摘してましたしね)などの突っ込み所はあるのかもしれませんが、それを補って余りある魅力的な小道具の数々にノックアウトですよ。

で、今回久々の再読では忘れていた要素も多々あり、また違った味わいを感じました。
印象に残ったのは、密室トリックに大きく関わった男性の異常っぷりはある意味犯人以上に狂気性を感じさせましたし、またこの密室がなぜ密室であったのかという命題が今現在においてもあまり類を見ないタイプの物だと感じ、横溝の独創性を改めて見せ付けられた。
中篇にも関わらずきちんと書き込まれた前時代的な犯行の動機も含めて、未だに色あせない小説である。
またクリスティの某小説を意識した叙述トリックも、その意外性こそ薄いものの著者のこだわりが感じられて微笑ましい。

さてさてこの小説を語るときにどうしても触れたいのが映像化。
このブログでも何度か紹介したが改めて紹介します。

高林陽一監督作品『本陣殺人事件』


中尾彬扮する金田一ジーンズ姿なのは衝撃的だが、それ以外は実に原作に忠実。
横溝独特の世界観の再現という意味では、市川映画や古谷一行金田一ドラマを凌ぐかもしれない。
個人的には金田一映画の最高傑作といっても決して大げさではないと思ってます。
中尾以外は無名の俳優が多い中、一柳賢蔵に扮した田村高廣の存在感が際立っている。
なかなか手に入りにくい作品だとは思いますが、探すだけの価値はあります。

どうしても見つからない、でも見たい!!
という人はDVDをお貸ししますのでご相談ください(笑)。




採点  4.0