『タイムスリップ森鴎外』(☆3.8) 著者:鯨統一郎



何者かに殺されかけ、大正11年から現代の渋谷にタイムスリップしてしまった、明治の文豪・森鴎外道玄坂で若者に袋叩きにされているところを女子高生・うららに助けられる。彼女の友人達の助けを借り、元の世界に帰る方法を探るうちに、文学史上の大疑問に突き当たり、鴎外を狙う意外な犯人の名が浮かぶ。

yahooより

紅子さんのブログ『☆勝手気ままな日々☆』で紹介されていた本作品。
いやタイムスリップシリーズはべるさんのブログでも紹介されてましたし、図書館でも見かけてたので存在は知っていましたが、森鴎外を略してモリリンと呼ぶのが気になって(←そこか!!)、借りてきました。

本当は森鴎外がいかにしてモリリンになっていくかを触れたいのですが、紅子さんによると表紙裏に「作品内で森鷗外が何をするか、だれにも言わないでください」と書いてあるあららしい(←私は発見できませんでした)ので、詳しくかけないが残念。
モリリンがあんな事やこんなこと、さらにはモリリンが進化(?)したメメント森に至ってはもう、ね(笑)。
まあこの作品の主人公としてはやはりある程度環境適応力に優れた人という意味では、森鴎外は相応しいのかもしれません。

あらすじに書いてある、文学史上の大疑問に関してははっきりいって荒唐無稽。
そもそも当時の平均寿命を調べてなかったり、いろいろなリンクの発見の仕方が強引だったりする訳で、こじつけもいいところ。
小林多喜二に至っては、犯人の作風からしてそんなところをコントロールできたわけはないですからね、
ま、こんな事鯨さん自体が真面目に検証しようと思ってないでしょうから荒唐無稽は当然、むしろその発想の飛躍を楽しめばよしでしょう。

登場人物達の存在感もとにかく薄い。
モリリンを助ける高校生たちも個性があるというより、むしろステレオタイプ的なキャラクター。
まあだからこそモリリンの弾けっぷりがより一層映えるといったところなのか?

とにかく、モリリンのはじけっぷりを楽しめればよし。
その判断基準は表紙の絵かも。
これがツボれば本書も楽しめます(笑)。

ちなみに物語のエンディングに著名作家の幻の作品への言及があります。
夢野久作『続ドグラ・マグラ』は読みたくない(だってまた同じコトを繰り返しそうだし)が、小栗虫太郎の「悪霊」が完結していたという場面(実際は未完)はちょっとホロリ。
なんだかんだいっても私は虫太郎が好きなのかもしれない(笑)


採点  3.8