『明智小五郎対金田一耕助 名探偵博覧会II』(☆2.8)



昭和12年の冬、薬問屋の娘の依頼を受けて、商都大阪を訪れた若き日の金田一耕助。老舗二軒の本家争いに端を発する騒動は、金田一の到着とともに異様な事件に発展する。一方、時を同じくして同地に立ち寄った明智小五郎は…。目眩くどんでん返しが連続する表題作ほか、雷鳴轟く古城で起きる不可能犯罪「フレンチ警部と雷鳴の城」など、古今東西の名探偵が大活躍の7編を収録。

yahooより

うが~、駄目だ~、この人の文章肌にあわね~^^;;
270ページの小説に3日近く掛かった(もちろん多少忙しかったのと花粉症のせいもあるが)上、なかなか頭に入ってこんし。
すごくね~、真摯な人だとおもうんですよ、推理小説に対して。そうじゃなきゃ、ここまで真面目に名探偵パスティーシュ集を書こうと思わんだろうしね。
でもねえ、合わないもんは合わないということでね^^;;
とりあえず各小説の寸評を。



まんま日本探偵小説界が誇る名探偵同士の対決。前提として両作家の原点から競演する可能性を探し当てたことは賞賛に値すると思います。
ただそれ以上の感想はというと。。。
明智的な構造に金田一的な設定を持ち込んだ感じに受け取ったのですが、いかんせい名探偵同士の競演におけるタブー的なもの(作者も後書きでそう述べていますが)をあえて破ることによって、事件の構造が妙に取り散らかった感じがします。
明智物に見られるような大局観的な物言いと、より事件にのめりこんでいく印象のある金田一物が上手くマッチしていない。
ラストで明らかになる真相なぞも、乱歩ならもっとさらっと悪者を描くのだろうし、金田一ならもっと印象的な余韻を残しているような気がする。
この両者で割りと持ち味の違う悪者観を無理に並列しようとしている気がして、読んでて腰が落ち着かない。
可能であればどちらかの作風にもう少し寄せていった方がよかったような気がするのだが、どうだろう


フレンチ警部と雷鳴の城』

後書きでも触れられているとおり、これはフレンチ警部ものというよりは間違いなくカー。
カーだからこそ、この限りなくBな密室トリックをまあいいかと許せるような気がする。その伏線としてカーの作品に登場する有名な名探偵達の存在を取り込んだ試みは非常に面白かった。
フレンチ警部ものは1冊しか読んでないのでどうなのかは知らないが、かなりおざなりな扱いをされているのは気のせい?(笑)
くだらなさも含めて収録作では一番楽しめたな~。


『ブラウン神父の日本趣味(ジャポニズム)』

なぜこの密室に「見えない人」がいたのかという部分についての展開の仕方は、なんとなくだがいかにもブラウン神父的な含蓄を含んでいる。
ただ短編であるせいか、それを納得させるだけの切れ味は無いし、仕方の無いところだが本家に及ばない。
同じようなものを扱った小説としては高田さんの「QED」シリーズの1冊の方が遥かに優れているなあと思ってしまいました。


『そしてオリエント急行から誰もいなくなった』

これはなんともいえないな~。
作者の試みは後書きを読むまでもなくわかるのですが、そこから先の部分での掘り下げが難しかったのかな~という印象。
短さのせいもあって、結局作者の主張が作品に反映されなかった一品というところでしょうか。


『Qの悲劇 または二人の黒覆面の冒険』

エラリー・クイーンとバーナビー・ロスが対決した有名な討論会ネタ(笑)を下敷きにした佳作。
あえて探偵ではなく作者に焦点をしぼったのは面白いものの、正直まったく印象に残らない作品になってしまった。


『探偵映画の夜』

ミステリ的な部分はともかく、探偵映画の薀蓄は面白かったし、事件を解決した警官が実はという趣向も遊び心があるなあ~。
こういう小説はパスティーシュの面白さのひとつかもしれない。
個人的にはわりと好きな作品でしたね。でも誰へのオマージュだったの???


『少年は怪人を夢見る』

まあ、どっかで聞いたことのある名前のオンパレードは楽しかったし、雰囲気もそんなに悪くは無いのかなあ。
ただラストのオチが見え見えなだけに、もう少し遊ぶか、逆にもっと内面的な掘り下げをしてもいいのではないかな~。
正直同じネタの試みとしては、北村想の小説の方が遥かに傑作だと思いました。


まあ、とにかく文章が。。。
個人的にはそろそろ芦辺さんから卒業しようかと思った今日この頃。



採点  2.8