『中原の虹』第1巻(☆3.8)



親もなく家もない貧しい青年、張作霖は、ある日老占い師に告げられる。;「汝、満洲の王者たれ」と。若き張作霖馬賊の長となり満洲でのしあがってゆく間、栄華を誇った清王朝はゆっくりと滅びようとしていた──。;激動の近代中国を舞台に、大地を駆け抜ける馬賊たちの躍動と、衰えゆく王朝を一身に背負う西太后の哀しみとが壮大なスケールで描かれる、中国歴史小説。

yahooブックス紹介より

浅田次郎未曾有大傑作『蒼穹の昴』の続編です。
どうやら全4巻の超大作になるようですが、現在のところ発売は2巻まで。3巻は当分先のようでヤキモキしそう。
とりあえず図書館から順番が廻ってきたので、第1巻読みました。

今回物語の中心にいるのは、張作霖
清朝末期の混乱の中、馬賊頭目から奉天軍を率い満洲に一大勢力を成すものの、蒋介石との軍閥争いに敗れ、関東軍によって殺された人物。
しかし浅田次郎が描く張はそんな一般的に習う歴史像からは程遠い、冷酷なまでに仁義を重んじ故国への想いを胸に刻んだ一代の英雄。
その強さゆえに敵、またその敵の捕虜になった同国人の命を容赦なく奪う姿勢には、読者すべてが理解できうるものではないかもしれないが、そこに描かれる人物の心に吹き荒れる憂国の嵐と民族に対する誇りは読者の胸を突き刺す。

彼に従う馬賊の中には『蒼穹の昴』の主人公の一人であった李春雲の兄、李春雷もいる。
故郷を棄て、故郷に母と弟妹を残してきたことを唯一の後悔とする彼が、張とともに立ち向かう清王朝
その新王朝の中枢にして偉大なる西太后のそばに絶大なる信頼と共に控えるは、故郷に残してきたはず弟・春雲。
弟はその事実を知り、兄はまだその運命を知らない。
2巻以降描かれるだろう兄弟の邂逅を、果たして浅田次郎はどう描くのだろう。

前半部分は名前と字、あるいは二つ名(あだ名)の意図的な混合、さらには北京語の発音の表記に若干の読みにくさを感じた。
しかしながら物語に頻繁に登場する占星術師白太太の予言が物語の導入部として聞いているし、ラストのラストで馬賊の若き戦士を巡る悲しきドラマは、いつもの浅田節、思わず涙してしまった。

本来こういったものは4巻通して評すべきものだろうが、いかんせん長い発行スパンの関係もあるので、とりあえず第1巻の感想を書いてみた。
図書館整理閉館中のため、順番が廻ってきたにも関わらず取りに行けない第2巻。ああ、はやく図書館開いてくれ。。。



採点  3.8