『完全犯罪に猫は何匹必要か?』(☆4.0)



回転寿司チェーンを経営する資産家・豪徳寺豊蔵が殺された。犯行現場は自宅のビニールハウス。そこでは、十年前にも迷宮入りの殺人事件が起こっていた…。豊蔵に飼い猫の捜索を依頼されていた探偵・鵜飼杜夫と過去の事件の捜査にも関わっていた砂川刑事がそれぞれの調査と推理で辿り着いた真相とは!?十年の時を経て繰り返される消失と出現の謎!すべての猫は、殺人のための装置だったのか。

yahooブックス紹介より

べるさん、冴さんオススメの烏賊川市シリーズ第3弾でございます。
今回は猫、猫、招き猫、猫、招き猫って感じで猫尽くし。
どいつもこいつもただの猫じゃねえ。とにかく平均体重オーバーの猫が多すぎ。一番でかいのは等身大の招き猫2体かい?

それはともかく、今まで読んだ東川作品では一番面白かったな~。
前作である程度シリーズキャラの位置づけが固まったのか、今回は登場人物の駄洒落も板についてます。
ボケたりツッコンだりのゆるーいユーモア路線に思わずニヤリ♪

一方で事件のほうもなかなかにシュール。
招き猫に見つめられたビニールハウスの中で起きた殺人事件とやはり過去に同じ場所で起きた殺人事件。
二つの殺人事件を巡る動機の異常さも、ある意味東川テイストだと思います。
異常心理の動機というと森博嗣さんを思い浮かべなくもないですが、適度なマニアっぷりも含めてこっちの方がまだ理解できるな~。
最後の最後で探偵が語る犯人の動機の裏側に隠された心情のブラックさにも思わず唸りましたね。

一見ばかばかしく思える招き猫が事件に果たす役割の大きさも意外なくらいまっとう。トリックのユニークさでは、『館島』に匹敵するのでは?
葬儀会場で起きた殺人事件の凶器消失のトリックに関してはあまりに馬鹿馬鹿しいのはどうなのかという気もするものの、ヒントの散りばめ方の上手さは十分に感じられました。
今まで多少なりともあったユーモアと本格の乖離がこの作品ではピタッと嵌っているような気がします。
なにしろ相当くだらない場面の中に実は重要なキーワードが隠してあるからな~、あなどれない。
前作で多少薄まったという感じの本格要素がきちんと盛り込まれていたのは嬉しかったですね。
願わくば、砂川警部はたんなるボケ役で居て欲しいと思うのは贅沢かしら。


採点  4.0


話は変わりますが、僕の大好きな街尾道には『招き猫博物館』というのがあります。
普通の民家を改造して作られた建物に、ところせましと招き猫が飾られています。
これは実際にこの家に住み着いた猫をモデルに尾道在住の画家園山春二氏が作った招き猫の展示場。
おそらくは未だに増えています。訪れるとモデルになった看板猫もお出迎え。
ぜひ一度お立ち寄りください。

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