『島田荘司私的ランキング』~ミステリ学部第2回課題『7人の作家』~

本楽大学ミステリ学部第2回課題が発表された。
事前の投票で決まった、国内5名、国外2名の作家に関する記事を書くこと。

ということで今回は国内第4位の島田荘司氏のマイランキングをつけてみることにした。
なぜこの企画にしたか、それはやはり学部生のべるさんが極私的恩田陸著作ベストランキング を発表したのに対抗するという理由があった(嘘)。
やはり新本格以降のミステリ文壇において、氏の果たした役割の大きさは異論が無いところであろうし、その著作に限らず時には物議を醸す過激な発言の裏にあるミステリへの情熱は未だに衰えることを知らない。
一応、「季刊島田荘司」やそれに順ずるたぐいの書籍以外は眼を通しているので、ランク付けする資格はあろうと思うのですがどうでしょう。

それにしてもやり始めてちょっと後悔したしまいました。
なにしろ作品数が多い^^;;
対象となった作品数、実に67。シリーズ物の作品はともかく、初期のノンシリーズに至っては、いろいろな書評サイトなどの粗筋を読んで記憶を呼び起こすしかなかった。
だから再読したなら、30位以降あたりはバシバシ順位が入れ替わるであろうと予告しておきます。(いい加減)
ではいよいよ一気に発表させていただきます。


1 異邦の騎士
2 死者が飲む水
3 奇想、天を動かす
4 斜め屋敷の犯罪
5 占星術殺人事件
6 北の夕鶴2/3の殺人
7 火刑都市
8 出雲伝説7/8の殺人
9 灰の迷宮
10 龍臥亭事件(上・下)
11 網走発遥かなり
12 ハリウッド・サーティフィケート
13 眩暈
14 暗闇坂の人喰いの木
15 涙流れるままに(上・下)
16 寝台特急はやぶさ」1/60秒の壁
17 アトポス
18 御手洗潔の挨拶
19 ネジ式ザゼツキー
20 夏、19歳の肖像
21 御手洗潔のダンス
22 御手洗潔のメロディ
23 確率2/2の死
24 Yの構図
25 切り裂きジャック百年の孤独
26 飛鳥のガラスの靴
27 羽衣伝説の記憶
28 漱石と倫敦ミイラ殺人事件
29 ロシア幽霊軍艦事件
30 高山殺人行1/2の女
31 天に昇った男
32 摩天楼の怪人
33 展望塔の殺人
34 魔神の遊戯
35 消える「水晶特急」
36 毒を売る女
37 三浦和義事件
38 水晶のピラミッド
39 夜は千の鈴を鳴らす
40 御手洗パロディ・サイト事件(上・下)
41 上高地切り裂きジャック
42 龍臥亭幻想(上・下)
43 ひらけ!勝鬨橋
44 踊る手なが猿
45 セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴
46 最後のディナー
47 Pの密室
48 透明人間の納屋
49 光る鶴(吉敷竹史の肖像)
50 天国からの銃弾
51 殺人ダイヤルを捜せ
52 消える上海レディ
53 最後の一球
54 秋好事件
55 犬坊里美の冒険
56 嘘でもいいから殺人事件
57 帝都衛星軌道
58 UFO大通り
59 エデンの命題
60 サテンのマーメイド
61 パロサイ・ホテル
62 溺れる人魚
63 嘘でもいいから誘拐事件
64 幽体離脱殺人事件
65 見えない女
66 ら抜き言葉殺人事件
67 都市のトパーズ


ベスト3に御手洗物の大傑作『占星術殺人事件』『斜め屋敷の犯罪』が入ってきていないのが意外かもしれません。

1位の『異邦の騎士』に賛同される方は多いんじゃないかな~。
本格ミステリというだけでなく、ハードボイルド、あるいは青春小説としてもかなり上質の作品。
あまりに物悲しいラストの余韻に涙しつつ、密かにあの男の再登場を願っていたのですが、それはかなわぬ夢となりそうですな。
3位の『奇想、天を動かす』も島田氏の提唱するミステリ理論、そして本格と社会派の融合という意味では一番優れていると思います。
小説としての好みを排して語るならば、完成度としては著者の作品の中でも随一たど思っていますね。
これ1冊だけでも読む価値はあると思います。

さてさて、おそらくもっとも意外だったと思われるのが2位の『死者が飲む水』
一応主役には『斜め屋敷~』にも登場し、吉敷シリーズの常連でもあるもーさんこと牛越警部。
クロフツ『樽』や鮎川哲也『黒いトランク』を思い起こさせる緻密なアリバイトリックもさることながら、この事件を手がけたのが牛越さんである事の必然性を強く感じたのです。
最後の犯人の対決場面、御手洗でも吉敷でもこの味わいは生まれなかったのではないでしょうか。
そういう意味で非常に好きな作品なのです。

こうしてみると近年の作品では『ネジ式ザゼツキー』の19位が最高なんですね。
最近の著作は社会派として作家の主張が強すぎて作品としてのバランスが崩れている印象があります。
もう一度本格としての原点に立ち戻った大傑作を生み出してもらいたいと思いますねえ。

ああ、それにしても島田書庫が完全補完されるのはいつのなるのだろうか^^;;