「ミステリとの出会い」・高校生編・前半~『本楽大学ミステリ学部』第1回レポート、その5~

いよいよ高校生編に突入です。

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~高校生編・前半~

このあたりになると、毎月出版される講談社ノベルスはチェックしていたので、逆の意味で小中学生時代以上に記憶が混乱しているような気がします。
まあ、なんとか捻り出してみますのでおかしいなと思ってもお見逃しください。

この頃になると京大三羽ガラス(懐かしい。。。)と言われた綾辻・法月・我孫子三氏のシリーズ物発行ペースが落ちついてきて(笑)、僕の読書も次第に彼らの後に続いた作家の作品群を読むようになりました。
とはいっても綾辻氏は『殺人鬼』などのホラー、法月氏は短編集、我孫子氏は初期の代表作ともいえる『殺戮にいたる病』を発表されており、作品におけるクオリティの高さは相変わらずですから、新刊を見かけるたびに即買いでしたけどね(笑)。
そういえばこの頃、島田荘司『眩暈』綾辻行人黒猫館の殺人』(記事はこちら)を巡ってのトリック流用論争があったようななかったような。。。

高一では有栖川有栖『双頭の悪魔』(記事はこちら)と出会いました。相変わらずシリーズ物の第3作目から読むという暴挙ですが、これは非常に面白かったですね。その勢いで『月光ゲーム』(記事はこちら)、『孤島パズル』(記事はこちら)を読みました。どの作品も非常に気に入り「学生アリス」の次回長編を楽しみにしたものです。それがここまで待たされる事になろうとは(笑)。
一方でこの頃に宮部みゆきさんも読み始めましたね。きっかけは『魔術はささやく』のドラマだったのですが、それが面白く小説を手に取ってからだったと思います。
さてさて次は元岡嶋二人井上夢人さん。コンビを解散してからの最初の作品『ダレカガナカニイル』は衝撃でした。主人公の脳に他の人が同居して事件の真相を探るというお話でしたが、そのあまりに悲しいラストに号泣した覚えが・・・。そんな素敵な出会いだったのにこれ以降まったく井上作品を読んでない私もどうなんだ^^;;;

さてさてこの年には一人の作家の強烈な作品と出会います。
それは笠井潔『哲学者の密室』。矢吹駆シリーズ第3弾(また途中からか)であり、当時世界最長ミステリと銘打った作品であります。
作中で繰り広げられる哲学論争に頭パニック、ついでに過去の作品のエピソードがバンバン登場するのであわてて読者中断、『バイバイ・エンジェル』『サマー・アポカリプス』『薔薇の女』を先に読みました。いやあどれもこれもある意味高校生には難解な作品でありましたが、それを超える面白さに感動した覚えがありますねえ~。

さて高一の3月にはどうしても触れておきたいドラマが公開されました。
その名も『湖畔の館殺人事件』。これ、綾辻行人『霧越邸殺人事件』のドラマ化なわけですが、ドラマの粗筋は「新人歌手キャンペーンの一行が、雪に閉ざされ、休業中の温泉宿に逃げ込んだ所に、童謡に合わせた連続殺人事件が起きる」・・・って全然違うよ、内容が!!
さらには登場人物も違えば、舞台も違うし、殺害理由も違うし、被害者も違うし、加害者も違うという恐るべきドラマ。
印象に残っているのは妙にコブシの効いた演歌調にアレンジされた北原白秋の童謡『雨』だけ。
綾辻氏にとってもドラマ化はこりごりと語った作品でございました(ちなみに後年『殺人方程式Ⅱ』がドラマ化されてますが・笑)。

さてさて続きましては高二ですね。
この時期にもファンとなる作家さん達と出会うことが出来ました。
まずは新本格ミステリの極北ともいえる作家麻耶雄嵩のデビュー作『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』
ゴシック調の雰囲気の中で次々起こる異形の事件、前代未聞(?)の探偵退場劇、衝撃の解決編、反転する物語。
今までの新本格のイメージをぶっ壊すかのような衝撃のメタ内容に僕の心は鷲掴みに。
このノベルズ版が発表された2ヵ月後の8月には早くも第2作『夏と冬の奏鳴曲』講談社ノベルズより発売。
前作をはるかに越える衝撃、孤島で繰り広げられる前代未聞の足跡トリック(誇張無し)と理解不能の結末。この時点で麻耶氏は伝説の作家となりました(笑)。

ちなみに『夏と冬の~』が発売された8月は講談社ノベルズから他に4冊の新刊が発売されました。
二階堂黎人『聖アウスラ修道院の惨劇』(記事はこちら)、井上雅彦『竹馬男の犯罪』(絶版)、竹本健治ウロボロス偽書』(絶版)、黒崎緑『柩の花嫁 聖なる血の城』(絶版)。
このうち竹本氏『ウロボロス偽書』はハードカバーで読んでたので他の三冊を購入。井上・黒崎両氏の作品は正直あまり好みでは無かったですね~。
で『聖アウスラ修道院の惨劇』。これが初めての二階堂作品、名探偵二階堂蘭子シリーズ第3弾(いい加減に学べ)で乱歩張りの通俗的世界観溢れる本格推理、冒頭の導入部からなんともいえないエピローグまでもろ好みの作品、あわててシリーズ過去2作『地獄の奇術師』(記事はこちら)、『吸血の家』(絶版、記事はこちら)を読みました。(ちなみに『聖アウスラ~』を先に読むと、『地獄~』の犯人が途中で想像ついてしまいます^^;;)
蘭子の個性の強いキャラには賛否両論ですが、それも含めて二階堂さんの作品は今でも楽しみにしております。

そういえばこの頃『ツイン・ピークス』が大人気、僕もはまりました。
その影響で手に取ったのが吉村達也『時の森殺人事件』全6巻(すべて絶版)。まさに和製ツイン・ピークスともいうべき内容でしたが、まあそのラストには口アングリ(笑)。
今でも非常に記憶に残る作品ですが、同時期に読んだ『金閣寺の惨劇』『銀閣寺の惨劇』の読む順番によって変わるトリックは分からなかったな~(この手法ってもしや清涼院流水の先駆け?・笑)。
また折原一『異人たちの館』を読んだのもこの頃でしょうか。
これが初めての折原作品だったのですが、あまりに鮮やかかつ強烈な叙述トリックの切れ味に悶絶。急いで既刊を読み漁りましたが、そのほぼ全てが叙述トリック
分かっているのに騙される。ある意味この時期最も衝撃を受けた作家さんかもしれませんね~。
他にはこの年『慟哭』で貫井さんがデビューしてたんですね。知らんかった。だって初めて貫井作品を読んだのが2年前^^;;

そういえばこの記事を書いてて初めて気づいたのですが、二階堂さんより麻耶さんの方がデビュー先だったんですね~。
講談社ノベルズで『翼ある闇~』が発売された時には、ハードカバーで二階堂さんのデビュー作『地獄の奇術師』がすでに刊行されていたのでそう思ったのですが、実は『翼ある闇』の初出は講談社から2年前に発売されてたんですね。当時買うのはノベルズ一辺倒だったのでまったく気づきませんでした。
いやあ~、ほんと不明の至りでございます^^;;

ちょっと記事が長くなってしまったので、高校生編は2回に分けることにしましょう。
ということで、最後にこの時期に発表され記事で触れなかった作品で当時印象に残った作品を紹介して締めくくります。

法月綸太郎『ふたたび赤い悪夢』(記事はこちら
  →『頼子のために』『一の悲劇』に続く三部作完結編。

北村薫『冬のオペラ』(記事はこちら
  →北村作品でもっとも好きな巫弓彦が探偵を務めます。個人的北村作品No1♪

今邑彩『そして誰もいなくなる』(絶版)
  →一時期ハマってましたね~、今邑さん。
    そういえば他の作品に登場する刑事がなぜか東野さんの加賀さんとダブって覚えていた記憶が^^;;;

若竹七海『競作五十円玉二十枚の謎』
  →若竹さんの実体験を基にした競作アンソロジー。あなたも結末を推理しよう!!


高校生編後半に続く(予定)。