『横溝正史に捧ぐ新世紀からの手紙』



金田一さん、事件です」日本一の名探偵の生みの親―。綾辻行人有栖川有栖岩井志麻子北村薫森村誠一岩井俊二CLAMPが熱く語る。最前線の創作者を刺激してやまない作家の魅力にせまる―新生ガイドブック。

目次

成城学園―「ヨコミゾ作品事件現場跡」を歩く(泉麻人)
金田一耕助を追いきれなかった岡山の旅(岩井志麻子)
横溝正史に捧ぐ(対談・横溝作品は知的レジャーランド(森村誠一綾辻行人)
対談・横溝正史がある限り、日本は大丈夫(北村薫有栖川有栖)
横溝正史的なものも、いつかはやりたい(恩田陸)
横溝正史に関するニ、三の事柄(小川勝己)
金田一さんはちょっと意地悪!?(CLAMP)
映画『犬神家の一族』との出会いがすべての始まり(岩井俊二)
横溝作品の死体の美しさ(乙一))
名探偵金田一耕助(『犬神家の一族』を読んで(上野正彦)
小説・幽霊座(横溝正史)
読切漫画・百日紅の下には(ささやななえこ))
横溝正史の世界(横溝正史江戸川乱歩、その歴史的な出会い(山前譲)
父・横溝正史のこと(横溝亮一)
金田一耕助はなお消えず(横溝正史)

yahoo紹介より

横溝正史生誕100周年を迎えた2002年、第一線で活躍し続ける作家達によって語られる横溝正史の影響。
冒頭の岩井志麻子による妖しげな(笑)岡山巡りの旅にはじまり、いきなり森村誠一綾辻行人との対談。
あまり想像出来ない組み合わせを実現できるのも横溝正史ならでは?
森村誠一が乱歩賞受賞時に審査員であった横溝から受けた厚遇に感銘し、のちにデビューを果たした綾辻法月綸太郎に接する時も自分と同格の作家として扱い彼らを励ましたエピソードが微笑ましい。
一方で息子・横溝亮一が語る父親横溝正史はまさに傍若無人、我侭の極みといったとてもいい父親とは思えない。
もちろんそこには戦前探偵小説の書き手としての不遇や病気に苦しむ横溝の苦悩があった訳だが、一方で乱歩と交わした書簡で垣間見える探偵小説への思いは決してさめることが無い。
後年、乱歩が評論活動中心のその執筆活動を転進したのを嘆き、また乱歩の訃報に触れた際にはその枕元で涙する。
正史にとって乱歩は偉大なるライバルであり、またなによりお互いを理解しあえた存在。
探偵小説の黎明期を支え続けた二人の偉大な作家の交流は、現代の作家においても羨ましいぐらいの関係ではないのだろうか。

ミステリ作家だけではなくCLAMPささやななえこといった漫画家、さらには映像作品を通して感銘を受けた岩井俊二、さらには直接その作品に触れることもなくコマーシャルなどを通してその作品の世界を垣間見た乙一
偉大なる横溝正史の作品がこういったものを通して、後世まで語り継がれていって欲しいものです。

最後に収録されてたアンケートに僕も答えて見ましょう。

1.横溝作品との出会いはいつどんなところでしたか。その時は何をなさっていましたか。

出会いとしての最初はテレビで見た市川監督の『獄門島』だったと思う。その妖しげな死体の数々と想像も出来ない動機と犯人に驚愕しました。
ただし映画版の犯人は原作と違っていたのですが^^;;;
作品としての出会いは『悪魔が来たりて笛を吹く』が最初だったろうと思います。
帝銀事件をモデルにした導入部、事件ごとに流れるフルートの音色、ひい~~~~~~~~~。


2.一番好きな横溝作品はなんですか?それのどのようなところに影響を受けましたか?

これは『悪魔の手毬歌』。これも最初に見たのは映画。
当時ビデオの無かった我が家、深夜放送を一人恐々と見ていました。
映画の出来が素晴らしかったので原作はどうなんだと思ったら、同じぐらい素晴らしい作品。
ミステリ部分だけでない独特の余韻が文学としても素晴らしいと思う。
本格エッセンスを重視するなら、やはり『獄門島』がベストだと思う。


3.横溝正史がご存命でいらしたら聞いてみたいことはなんですか?

もう、金田一の次の事件はなんですかということだけですね(笑)。


4.もし自分がリトライするとしたらどの横溝作品をしてみたいですか?

作家でもなんでもないんで、想像も出来ません。
ただ舞台もしくは映画で『真珠郎』をやりたいと思うことは今でもありますね。
ただあのキャラを演じれる人はそうなかなか居ないかも(笑)。


5.映画で一番印象深い横溝作品はなんですか?

高林陽一監督『本陣殺人事件』。金田一耕助中尾彬を迎え、服装もジーンズ・ジーパンという異色作。
にも関わらず市川映画すら凌ぐ横溝風味は強烈に残る。
市川映画を1本挙げるなら『悪魔の手毬歌』で。とにかく若山富三郎演じる磯川警部が出色。


6.その他横溝作品、氏に対する思い入れを何でもお話し下さい。

この作品集には横溝の短篇『幽霊座』が収録されている。
久しぶりに読むと、金田一は飄々としているというよりもむしろチャーミングかつ皮肉屋でもあり、どこか傍若無人なところもありながら愛すべきユーモアを持ってる人物なんだと思った。
そういう意味でも実は稲垣吾郎金田一が一番イメージに近いと思った。
犬神家の一族』『八つ墓村』は原作にリスペクトしたいい作品だったと思う。それだけに最新作『悪魔が~』の改変ぶりは残念だった。
横溝のエッセンスをもっと大切にして原点に戻った映像化をして欲しい。
横溝の原作は何より完成された文学であり、新作を読めない僕らは映像の世界で新しい横溝を垣間見れるかも知れないのだから。