『厭魅の如き憑くもの』(☆4.0)



憑き物筋の「黒の家」と「白の家」の対立、「神隠しに遭った」ように消える子供たち、生霊を見て憑かれたと病む少女、厭魅が出たと噂する村人たち、死んだ姉が還って来たと怯える妹、忌み山を侵し恐怖の体験をした少年、得体の知れぬ何かに尾けられる巫女―。そして「僕」が遭遇した、恐るべき怪死を遂げてゆく人々と謎の数々…。奇才が放つ、ミステリーとホラーの禍々しい結晶、ついに昇華。

yahoo紹介より

新年一発目のこの作品、『本格ミステリベスト10』第3位。
にも関わらず、『このミス』ではランク外。
読んでみると、『このミス』で評価されていないのがほんと不思議に思ってしまいました。

ホラーテイストで進みながら、閉鎖的な村で起こる連続殺人を綺麗に積み上げた論理で解決するガチガチの本格要素。
そして最後の1ページでひっくり返す技。物語の構成としては申し分ないと思う。
特に複数視点で語られる記述に隠された叙述トリックに関しては、ほとんどの読者が騙されるのでは?
ホラーとしても十分読めるし、本格ミステリとしても今年読んだミステリの中でも上位にランクされる印象。
そういった意味では贅沢な作品なのか。

ただ、非常に読みづらい。特に前半。
だって同じ読み方『サギリ』という女性(漢字が違う)が六人もいるんですから。もう頭で整理できるまでは巻頭の家系図と睨めっこ。
まあそれなのに、途中まで登場人物を勘違いしてたのは単に僕の責任でしょうが^^;;

また前半で大いに語られる土着信仰について語られる部分に関して、小説として読むには少々歯応えがありすぎた。
それ自体が生み出す怖さは十分にあるし、それがラスト1ページの怖さに上手く繋がってる。
そういった意味ではホラーの書き手としての力量は十分に感じさせられるし、その要素を逆手に取った逆転劇のロジックは京極夏彦チックな上手さを感じさせるのだが、それ自体の語り口はどちらかというと高田崇史のような堅苦しさを感じさせる。
つまるところ、文章が提示される感じに収まっており読ませるというところに達していない印象なのだ。

読み終わってみればそういう堅苦しく感じた部分もまた著者の狙いではあったとは思うのだが、そこまで書き込まなくても夕闇にひそむモノの怖さは十分に伝わってくるだけにもう少し力を抜いてもよかったのでは。とはいいつつもこれはまあ好みの部分もあるだろうし、そういうのが好きな人には十分楽しめるだけの要素はあるのは間違いない。

それにしてもやっぱり日本人の習性なのか、グロ系や宗教系の怖さというより、土着的な見えないモノ的な怖さの方がリアリティを感じるのは気のせいでしょうか。
とりあえず、こんな村に生まれるのだけはやだなあ。。。