『QED~ventus~御霊将門~』(☆3.0)



今、将門の歴史が変わる!大怨霊に隠された真実の顔が明らかに!!旅する「QED」、絶好調第12弾!!暖かい春の日差しのなか出掛けた桑原崇と奈々、沙織の棚旗姉妹のお花見は、いつしか日本三大怨霊として畏怖され続ける平将門の名所行脚へと一転。『神田明神』『将門首塚』からはじまり、茨城県そして成田山までを巡りながら、崇によって少しずつ解き明かされていく歴史の謎。『?馬(つなぎうま)』の家紋が示唆する驚愕の真実とは!?

yahoo紹介より

最初に一言。

御名形史紋、登場せんのかい!!

前作であれだけ意味深な立ち去り方をして、結局人間関係に何の波ももたらさず。神山さんが再登場してるだけにねえ、出て来て欲しかったよ。
でもその神山さんも、あんまりといえばあんまりな登場の仕方。伏線もなにもない単なる次回作の場つなぎ?
ということで、今回はある意味『~熊野残照~』を越える薀蓄本。

まあ、『~熊野残照~』よりは将門の方が多少知識がある分圧倒的に読みやすかったのはありますが、結局導き出される解答がそこですか。
個人的には将門が○○っていう世界の方が面白いと勝手に思ってるわけですが(『帝都物語』好きだし・・・)、一方で崇が最後に出した結論も意外性を感じたかというとそうでもない。っていうかここまでシリーズを読んでたら(っていうか読んで無くても)そこに何がくるのかは想像できるし、むしろ一般的にそう考えられてる場合もあるでしょう。
(ブログ仲間冴さんの記事によると、地元の方によるとそんなことは自明の理らしいです)

まあ、結末がある程度想像できたとしてもその過程に面白さがあればいいかなと思うのですが、この本に関しては割とポピュラーな部分が多いので、別角度から書かれた将門の伝記に近い仕上がりで、イマイチ盛り上がらない。
そして前作でとみに感じたキーワードの恣意的な採用という部分に関していえば、この作品は読んでいて結末ありきで過程を構築していったのではないかという気にさせられた。過去のシリーズに較べても崇の論証が憶測の憶測を積み重ねている部分が多く、実証という意味ではかなり不満足な出来(作中でいつも以上に推測という言葉を連発する崇が言い訳めいてて面白かったり^^;;)。

このシリーズの特徴はやはり崇の歴史考察の部分に負うところが大きいと思うので、その部分の骨子が弱いとなるとファンとしての面白さが半減すると思う。
ただ読みやすさはシリーズでも上位だと思う(面白さとは別)だし、将門を知らない人にとってのガイド本(あるいは史跡散策用)としては意外と適当だったりと思ったりして。