『月は幽咽のデバイス』



薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、オオカミ男が出るという奇妙な噂があった。瀬在丸紅子たちが出席したパーティの最中、衣服も引き裂かれた凄惨な死体が、オーディオ・ルームで発見された。現場は内側から施錠された密室で、床一面に血が飛散していた。紅子が看破した事件の意外な真相とは。


Vシリーズ第3弾ですね。
第3弾といえばS&Mシリーズの第3弾は「笑わない数学者」。あの問題作です。


個人的には似てるなあ、と思いました。
根本におけるトリックの考え方は同じ。そこから解答が導き出されるという手法も似ているといっていいと思う。
そして解決に曖昧な部分が残るというのも似ている(この作品に関しては読み込めてないかもしれないが)。
この類似性は果たして計算されているのだろうか?気になる。。。

ただこの両方の作品が違うところが、『笑わない~』のメインにおいてトリックの解決そのものが重視されているのに対して、『月と~』は現象そのものの在り方に重きが置かれているところだと思う。この差異はS&MシリーズとVシリーズ全体の差異といってもいいのかもしれない。
前者が理系という特殊な設定を舞台に根底でわりとガチガチの本格を見せてくれたのに対し、後者は設定自体はクラシカルと言っていいぐらいの設定を持ちながら中身はむしろアンチ・ミステリな薫りが漂っているような気がする。
Vシリーズにおいて瀬在丸紅子と保呂草という違ったタイプの探偵役を同列に配してるという意味でも、Vシリーズのユニークさを感じてしまった。

ここまで書いて、あまりこの作品に触れていないことに気付く。
正直読みやすさはあるものの、作品そのものの面白さという意味では少し落ちるのかなと思う。
全体に肉付けの仕方がやや過剰な気がして、読んでいて途中で満腹感を憶えてしまったかな。