『有限と微小のパン ~The perfect outsider~ 』



日本最大のソフトメーカ「ナノクラフト」の経営するテーマパークを訪れたN大生西之園萌絵と友人たち。そこでは「シードラゴンの事件」と呼ばれる死体消失があったという。彼女らを待ち構えていたかのように事件は続発。すべてがあの天才の演出によるものなのか!?全編に漲る緊張感!最高潮森ミステリィ

いよいよS&Mシリーズも最後でございます。
ラストを飾るに相応しいあの天才の再登場、そして分厚さも最高潮(笑)。結構読み通すのに時間がかかりました。
でも初読の時にはあまりいい印象はなかったのですが、再読してみると結構おもしろかったなあと。

物語としては森さんの中ではわりとシンプルな構造のような気がするんですよね~。
で、そのシンプルさの裏に隠された謎というのが、ある意味凄まじいぐらい手が込んでいていながらとんでもなくシンプル。
特に事件の動機に関しては、まさにこのシリーズの完結編に相応しいのかもしれません。

ここに登場する密室は3部屋。一番最後の密室は多分わかりやすいのですが、最初の2つはどう考えてもわかるわけない、というかかなり非現実。
でもこの世界観、そしてこの登場人物たちならばこういうのもありかなという気がします。
ラスト、バーチャルと現実の世界の2つで邂逅する犀川とあの天才(隠してることになるのかな^^;;)の会話が、S&Mシリーズが作り上げた時間の流れを集約している気がして結構気のきいた仕上がりになってると思います。
ただ、萌絵の扱い方がすごく微妙になってしまったのは残念かな~。まあ、あの天才(しつこい)が相手ですからしょうがないといえばしょうがない。ただこの扱い方自体もシリーズ全体の流れの中で構築されたものと考えられるし、森さんがこの10部作を、緻密な構成のもとで執筆したのが感じ取れるかもしれません。

作中で披露されるお約束の難解な理論の応酬はシリーズの中でもとくに理解しにくかったですが、それがあったとしてもシリーズの最後としては合格点なんではないかと思います。
それにしても真相にはびっくらこいたなあ・・・・。