『ビニ本団長と鉄板句女』 第10回「川柳大会の賞品は・・・」

第九回はこちら

「えへへ、僕ですよ、僕。アーニスです。とっておきを披露してしまいました。」
なんと、貧坊ちゃまに仮装してたのは、あの沈着冷静・眼鏡キャラが売りのアーニス!?


でも、アーニスは知らなかった。
皆、変装はあきらめて川柳大会に向う雰囲気になっていたことを。
アーニスの運命や、いかに‥


川柳大会まで、あとわずか‥(まだ!?)

ビニ本団長と鉄板句女』 第十回「川柳大会の賞品は・・・」


Mr,Gが「Katty's Cafe」に現れて1時間後。

店の隅では、貧ぼっちゃまの仮装のまま燃え尽きて白い灰になってしまったアーニスがぽつんと座っている。
その傍ではなぜかkattyが「あしたのジョー」の主題歌を歌っている・・・。
ベタ過ぎませんか、kattyさん・・・。
横ではマダム白猫がトライアングルを叩いているが、そんな合いの手あったっけ?

それはともかく中央の机を囲むように川柳大会に参加を表明した常連客達が打ち合わせをしている。
場を仕切っているのはMr.G。さすが幹部であり参謀と呼ばれる男。
その仕切りの上手さに感心する鉄板句女。

「では、本気で川柳大会に挑むメンバーが1組。
主に隠密調査を担当するグループが1組。
そしてどさくさにまぎれてお金を儲けるグループが1組ということでいいですね。
またアクシデントに対応できるように遊撃チームも作った方がいいですね。」


なるほど、グループ分けすることによってそれぞれの行動に専念するっていうことね。
それはいいかも・・・・でも金儲けってなに?
幹部としてはやっぱり必要経費の事も考えなくちゃいけないのかしら?
あれ、そういえばMr.Gってなんの幹部なのかしら?

結局、グループ分けはつぎの通りになった。

本気組   ビニ本団長、女将、まぁまぁ
偵察組   katty、マダム白猫、純朴
金儲け組  アーニス、こぶ、みら~
遊撃隊   Mr,G、海山らいす、鉄板句女

おっと、いつのまにみら~さんまで参加!!しかも純朴さんと違うグループ。
純朴さん以外会ったこともないのに、グループ分けの許可を取らなくてもいいのかしら?
でもこのメンバーに脅・・・・依頼されたら断れないわよね。
ということは結果一緒だから、まぁいいか♪

それにしても、五・七・五をブツブツ呟いてるまぁまぁや、どこか雰囲気に詩を感じさせてくれる女将はともかく、あの団長に川柳なんて詠めるのかしら?
っていうか、私も詠みたかったなあ~。
でもいいか、会場に入るには一句は詠まないといけないから、そのチャンスもあるしね♪

「ういういっす!!みら~ちゃん、サンキュー♪純朴、と~~~~っても助かり!!」

突然店内に純朴の心から幸せそうな声が響き渡る。
うーん、この人ほんとに裏表のなさそうな感情表現をするなあ、羨ましい・・・。

「う~~~~~~、純朴、とっても重大な情報をゲ・ッ・トしました~~~~~♪」

重大な情報?今度はなに?てらみすっの次にはやるのはナタ・デ・ココとかって言わないよね?

「な・ん・と、今度の川柳大会、賞品が出るらしいのだ~~~~~♪」

どよめく店内。気のせいか、常連客の目がギラギラしてきた気が。
なんだか現金な人ばっかりだなあ・・・。

「じ、純朴さん、その・・・賞品っていうのはなんなのかしら?」

katty店長が尋ねる。その声はどこか震えている気がする。
っていうか、店長が一番興奮してる気がするんですけど。
意外にタダとか、プレゼントとか好きよね~。なんだか主婦っぽいけど・・・結婚してるのかな?
案外子供とかいたりして・・・。
おっと、それより賞品ってなにかしら。

「賞品はなんと~~~~~~~~~~~絵です!!」

絵!?絵なの!?
絵っていったら、貴重なものは貴重なのよね。すっごく高く売れたりして・・・。
私、結構「なんでもかんでも鑑定団」で勉強してるし・・・うん、結構目利きに自信があるぞ・・・。
ついつい絵を売ったお金で贅沢することを考える。

「♂!!絵ですか!!何の絵っすか、純朴殿!!」

気合の入ってるビニ本団長。でもその服装センスで絵のことわかるのかしら?
それ以前に、あなたは絵よりビニ本でしょ!!
思わず心で毒づく鉄板句女。

「えっと~~~~~~~~、作者は野いちごジャムさんって方みたいっす♪おいしそーな名前ですよね♪」

いや、おいしそうは関係ないよねこの場合!?
でも、野いちごジャムさんっていう画家知らないんだけど、有名なのかな?気になるよ~。

「あっ、俺、その人知ってますよ!!」

そう言ったのは丁稚のこぶだった。意外な人が知ってるんだ!!

「うちで作るケーキの材料で、その野いちごさんがつくってるイチゴを使ったりしてるんですよ。
結構お客さんの間でも評判いいんですよね~♪
で、たまに材料を取りに行くこととかあるんですけど、そこに絵が何枚か飾ってあるんですよね~。
優しい感じでいい絵っすよ。」

へえ~、そうなんだ~。ちょっと興味あるわ。
そうよね、絵って売るだけじゃなくて鑑賞してこそだし、うん、欲しいかも。
鉄板句女がkattyを見ると、早くも自分のものにでもしたつもりか店のどこに飾るか考えているようだ。
その向こうではマダム白猫が、「やっぱりマダムといえば素晴らしい絵よね」なんて呟いている。
いや、マダム意味わからないんですけど。

団長はまた♂、♂言ってるし、まぁまぁさんはパンダモード入ったし
女将さんも何か書き始めてる。
うわ~、なんか背後にオーラがただよってるんですけど、あれって対抗心?

折角まともな状況だったはずの店内が再び盛り上がってくる。
こうなると鉄板句女はどうにもできない。すがるようにMr.Gを見ると、
「・・・野イチゴジャム・・・・絵・・・・もしかしたら・・・・いや、しかし・・・・」
と呟いている。

あれ、Mr.G何か考え込んでる・・・心当たりでもあるのかしら?
でもこの人の情報網、海外まで広がってるみたいだし、何か知っててもおかしくはないよね・・・。
そっとMr.Gに近寄り、独り言を聞き取ろうとする鉄板句女。

そこへ突然クラッカーの音が響き渡る。

「これは前祝いよ!!」

いつの間にやら、再びなめ猫の扮装をしたkattyがテーブルの上で酒瓶を持って仁王立ちしている。
巻き起こる歓声。鉄板句女の思惑を無視するかのように再びはじまる大宴会。

みんな、川柳大会は明日なのよ~~~~~~~。
注意しようとする鉄板句女。しかしいつのまにか隣にきていたマダム白猫に無理矢理酒を注がれてしまう。
そして・・・・

床の上で鉄板句女が目を覚ました時には、店内は静けさだけが横たわっていた。
カウンターの奥でkattyが洗い物をしている。カウンター席では、Mr.Gがグラスを片手にそれを見つめている。
体を起こして、店内を見回すと鉄板句女とその二人以外はだれもいない。
さすがにみんな準備の為に帰ったらしい。

頭を振りながら床から立ち上がり、近くのイスにこしかける。
カウンターの二人はどうやら思い出話に華をさかせているようんだ。
なんだかいい雰囲気。もしかしたらこの二人、過去になにかあったのかしら・・・。

そんな事を考えるうちに、鉄板句女は久しぶりに家に残してきたままの旦那と子供の事を考える。



                                            (第11回へつづく)

※店の名前、個人名などはほぼフィクションです(笑)