『ビニ本団長と鉄板句女 』~ 4.本楽堂協会

第三回はこちら

「今日はビニ本団長にプレゼントがあって、来たのですよ」
おもむろにバッグから書類を取り出す。

ビニ本団長は、身を乗り出してその書類に魅入る。
いったい、何が書かれているのだろうか?
鉄板句女も思わずその書類に身を乗り出す‥。

ビニ本団長と鉄板句女』 第四回「本楽堂協会」


二人が見入る書類・・・
何かの案内が書かれてるようだ。しかし鉄板句女のところからは字が良く見えない。

「なになに・・・・『第八回日本本楽堂協会川柳大賞』募集要項・・・・これは!!」

ビニ本団長とアーニスが顔を見合わせる。
日本本楽堂協会?聞いたことないぞ、そんな団体?
でも、本楽堂というフレーズがなんだか心に響く。

「この本楽堂協会というのは・・・・あの『伝説のビニ本』を自費出版したとも言われるあの協会でしょうか・・・?」

アーニスの言葉にビニ本団長は頷く。
伝説のビニ本自費出版だったのか!!
あらたな事実に混乱しつつも、鉄板句女は二人の間からその書類を覗き込む。

どうやら、その日本本楽堂協会とやらが主催する素人川柳大会の募集チラシみたいなものらしい。
しかし、なんだか妖しい響きを漂わせる「ビニ本」という響きと、素人川柳。どう結びつくのだ?
鉄板句女の頭はますます混乱する。

「どうやら締切は今月末のようですね。アーニスさん、これはどう思います?」
「そうですね。罠という可能性もありますが、やはりここは思い切って敵の懐に飛び込んでみるのもいいのではないかと・・・・」

アーニスの端整な顔立ちの奥に潜む眼が妖しく輝く。
敵?本楽堂協会は敵なのか?っていうかなんの罠なのよ?
鉄板句女の混乱をよそに、2人は会話を続ける。

「面白そうな話してるわね~」

突然の声。
3人が視線をあげると、そこには店長が立っていた。
店長の問いかけに困惑するビニ本団長とアーニス。
(だったらこんなところでそんな話するなよ・・・)

「川柳大賞・・・・へえ、私も応募してみようかしら。」

しっとりと、しかし良く通る店長の声。
不覚にも鉄板句女はうっとりと聞き惚れてしまう。さすがに常連の2人はそんな事はないようだ。

「kattyさん、川柳詠まれるんですか?」
「あら、失礼な!!眠れない夜はいつもれみ~やもるつ、まるたんと一緒にワインを片手に口ずさんでるのよ」

れみ~、まるたん、もるつ・・・猫じゃん!!
鉄板句女、心の中でツッコミ。いや、でもこの人ならありえる?

「♂!!それなら店長もぜひ参加してください!!なにかありましたら、私達が全身全霊をかけて守らせて頂きます!!」

なにかあったらって、川柳大会になにがある?

「そうなると、他の人にも声を掛けてみましょうか・・・海山らいすさんやこぶさん・・・・あとは・・・・」
「これだけ事が大きくなると、女将も呼んだ方がいいかな・・・・」
「団長、そういえばよく女将の事話してますが、いったいどういう人なのですか?」

アーニスの言葉に、ビニ本団長は不思議そうな表情を浮かべる。

「アーニスさん、会ったことありませんでしたか?」
「ええ、団長の話の中でしか知らないですね。」

結局、その後ビニ本団長、アーニス、そしてkattyさんの3人は川柳大会の話題で盛り上がり始めてしまった。
最初はその会話に耳を傾けていた鉄板句女も、だんだん退屈になってきた。
そこにまた一人の常連が喫茶店を訪れる。
お水代わりのウオッカを運ぶべく、3人のそばを離れようとする鉄板句女に、ビニ本団長が声を掛けた。

「♂!!めぽさん!!あなたも参加してみませんか!!」

どうする鉄板句女?


                                            (第五回へつづく)

※店の名前、個人名などはほぼフィクションです(笑)