『今日を忘れた明日の僕へ』

あの嵐の夜、僕は事故にあったらしい。それ以来記憶を蓄積できないからだになってしまった。僕は失われてゆく記憶を少しでも補うために、退院以来、かかさず日記をつけてきたのだ、と妻は説明してくれた。さらに事故に遭ってから半年のあいだに、いちばんの親友が失踪したのだとも。しかし親友が実は殺されていたことを知る。その一瞬、血まみれで死んでいる親友の姿がフラッシュ・バックしてきた。「どうして僕は見ているんだ?」…僕の事故と同じ日に死んだ妻の友人、親友の失踪直前に「自殺」した女子高生、さまざまな謎に取り巻かれていく僕。もしかしたら、「僕が殺してしまったのか?」メフィスト賞受賞の新鋭による騙りの新境地。

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まずタイトルが好きですね~。なぜかこれだけで少し切ない気分にさせられてしまうというか。またこの表紙も渋いけど僕は好きだなあ~。

さてさて内容はというと、寝てしまうと昨日までの記憶(正確には事故直後から昨日まで)が無くなってしまうという特殊な設定の中で、主人公が自分が起こしたかもしれない真相を追うってな話です。
まあ犯人が殺人を起こした事すら忘れているかもっていう設定をどう料理するのか楽しみでしたが、さすがはくろけんさんというか隅から隅までこの設定を生かしきってますね~。

時々ロジックがストーリーから浮き上がってしまう事があるくろけんさんですが、この作品に関しては両者のバランスが上手く取れているのかな~、とは思います。犯人なんかは大体想像できるとは思いますが、この歪んだ、でもこういう事もあるだろうなという説得力は十分あると思います。

ただ、個人的に事件解決の糸口を与えてくれる(?)女性と主人公の関係がイマイチ唐突に感じられました。伝えたい事はわかるので、ちょっとしっくりこないだけなんですが、2人の感情の行方に関してもう少し筆を裂いてもよかったのかなという気がします。
だからラストは映画的で美しいんですけど、でも正直あまりぐっとはこなかったなあ。

あとラスト前で登場人物の名前が一箇所だけ別の登場人物の名前と入れ替わってるんですけど、これは誤植ですよね~?それともひっかけかイメージ描写?