『闇のなかの赤い馬』 著者:竹本健治



聖ミレイユ学園で神の怒りとしか思えない悲劇があいついだ。ウォーレン神父は校庭の真ん中で落雷に遭って焼け死に、さらにベルイマン神父が密室と化したサンルームで、人体自然発火としか考えられない無残な焼死体となって発見されたのだ。「汎虚学研究会」はみんなからキョガクの連中とよばれる、ちょっと浮世離れしたメンバー四人で構成されている。部長は僕、室井環。中でも好奇心のかたまり、フクスケは女ホームズと化し、ワトソン役に僕を指名した。ベルイマン神父の死は殺人に違いないというのだ。僕は夜ごと見る、狂った赤い馬の悪夢でそれどころじゃないのだが…。
 
yahoo紹介より

まず最初に巻末の「私が子供だった頃から」の引用です。


今でも子供です。
すいません。

自分が子供だった頃に読みたかったようなものを書いてください、と宇山さんに言われました。
僕はいつもそういうものを書いているつもりなので、いつものように書きました。
文章も特に子供向けにはしていません。


ある意味潔いです。ですが、だったならなぜこの配本を?宇山さんの編集方針は子供を対象にという部分はかなりウエイトが軽いんでしょうかね。
まあ、それはおいといて、本編へ。
うん、確かに子供向けの文章じゃありません。というか、いつもの竹本さんですね。
となると、僕の中では竹本さんは文章がそんなに巧くない、という意見なんですが、これを読んでもやっぱりその印象は変わらず。
イマイチ、舞台となる学園や寮の見取り図の配置が思い浮かばない。それぞれの部屋の情景や物の配置のイメージが掴みにくい・・・などなど、読んでてピンとこない場面が多かったです。

また、主人公達にも共感しにくかったのも読みにくかった原因ですね。
というか、あまり登場人物達に肉付けされてないせいか、誰が誰でどういう役割なのかが曖昧になって、時々混乱しかけました。冒頭の登場人物表も名前が羅列してあるだけだし・・・。

そして密室トリックにも疑問が・・・。理屈は分からなくもないんですが、でもこのやり方で犯行が可能だったとはどうしても思えません。
トリックについてのリアリティは必ずしも必要だとは思わない(そんな事言ったら、島田さんや麻耶さんの作品なんて読めないですからね~)ですけど、でもその場合はそれでもねじ伏せるぐらいの肉付けが必要だと思います。
そういう意味では、この小説にはそれが決定的に足りないと感じました。

配本のサイズや、文字の大きさから考えて通常の長編より短い文章量だと思いますが、どうもその分濃縮したというよりは、完成型からところどころ抜いちゃった、みたいな中途半端さを感じさせる内容でした。

少なくとも、この配本で書くよりも普通のノベルズや単行本で書いた方がよかったんじゃないのと思いますね、これは。