『サイコロジカル ~兎吊木垓輔の戯言殺し~』

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「きみは玖渚友のことが本当は嫌いなんじゃないのかな?」天才工学師・玖渚友のかつての「仲間」、兎吊木垓輔が囚われる謎めいた研究所―堕落三昧斜道卿壱郎研究施設。友に引き連れられ、兎吊木を救出に向かう「ぼく」こと"戯言遣いいーちゃん”の眼前に広げられる戦慄の“情景”。しかしその「終わり」は、さらなる「始まり」の前触れに過ぎなかった―。 

yahoo紹介より

西尾維新の「戯言シリーズ」第4弾にして、初の上下巻です。

相変わらず変な名前の登場人物ばっかりで、漢字変換が面倒くさいなあ~。
今回はかつて玖渚友と“チーム”を組んでた兎吊木垓輔を救出するために、山奥の研究所(今回もマッドな方々ばっかりがいらっしゃる訳ですが)に出掛けたいーちゃん達一行が、またしても事件に巻き込まれるという訳です。

前作がどちらかというと「萌え系全開ミステリ」だったのに較べて、この作品はちょっと登場人物が落ち着きます。
とはいっても相変わらず紙一重な人ばっかりなんですけど、でも今回は多分シリーズの大きな転換点になるような気がします。
タイトル通りにいーちゃんの戯言は兎吊木垓輔によって木っ端微塵に破壊されるし、今までに見ることの出来なかった玖渚友の姿が垣間見られるし、なによりいーちゃんと玖渚友の関係に変化の兆しが見られるわけで、シリーズの結末がいったいどうなるのかまたちょっと楽しみになってきました、

ミステリとしてはどうかというと、前作もそう思ったんですけ『クビキリ~』や『クビシメ~』に較べると、事件そのものの犯人に関しては凄く分かりやすいなと思います。犯人の脱出トリックなんかも結構ラフな構造のような気がしますし、作中に登場する“大泥棒”石丸小唄の能力なんかはあまりに現実離れしてます。
でも、このへんはかなり作者が確信的にやってる事なんだろうなと。
エピローグで“最強の請負人”哀川潤推理小説が嫌いだといった理由も、この作品のスタンスの一面を表してるんじゃないかなと思うんですね、はい。

今までの作品に較べると、いーちゃんの戯言が哲学的な要素が強くなって少々読みづらい(特に小説の冒頭で兎吊木垓輔がいーちゃんに投げ掛けた「君は玖渚友の事が本当は嫌いじゃないのか」という質問の件は、今までの作品の中でも一番とっつきにくかった・・・)ところも多くなってるんですけど、そこ「戯言シリーズ」のお約束というか、すべてが作品観に通じてる要素があるので読み捨てられないんですよね。
あまりにもあからさまな前フリと、予想通り(プラス歪み倍増)の答えの出し方なんかはこれがなきゃ駄目だよなって部分まで達してるんじゃないかと、個人的には思ってます。

本格という意味では物足りないかもしれないですけど、シリーズを通して考えるとやっぱり計算された一つの作品に仕上がってます。

ところでいーちゃんの戯言に出て来た、「前書きに次回作に期待!!と書かれている小説」なるものに非常に興味が・・・。ある意味とんでもなく興味をそそられる名キャッチコピーだと思うんですけど、どうでしょうか・・・。


総合  3.8