『一人二役』・『疑惑』・『人間椅子』・『接吻』

一人二役

これまたなんとも感想の難しい作品ですね。
現代でいうとマンネリ夫婦が、コスプレやらイメクラプレイで新鮮な気持ちを取り戻すってこと?
でも、実際にこんなことしたらよけい夫婦の仲が壊れてしまうような・・・。
乱歩自身のコメント通り、もっと長くしていれば幻想小説の佳作にはなったと思うんですが、いかんせんこの短さだとねえ。

『疑惑』

乱歩自身は力不足の作品と感じてるようですが、一種の心理サスペンス小説として読むとドキドキして楽しめました。
まあ事件の真相は乱歩好きなら想像つくでしょうしが、乱歩としては珍しい趣向の小説ともいえるかと思います。
登場人物の葛藤なんかもうまく書かれてますし、もうすこし評価が高くてもいい作品だとは思います。

人間椅子

ああ、これが乱歩だよと思わせる作品ですね。
椅子の中に人間が入ってしまうという発想がとってもアングラな感じで大好きですね。座った人に対してその触感だけで妄想を膨らませるあたりは、のちの怪作「盲獣」(個人的に好き)を髣髴させて、好きな人にはたまらん世界を作り上げてます。
ただ最後のどんでん返しが、それまでの雰囲気を壊しちゃうんですよね。
このネタを使うにしても、もう少し工夫すれば妖しい雰囲気を残せたと思うのが残念です。

『接吻』

まるで昼ドラの1シーンを切り取ったようなお話ですね。
情けない男と、最後まで考えてることをいまいちつかめない妻。いつの時代にも、本当に強いのは女性のほうなんだなあ、としんみりしました。軽く読める小説です。