『二銭銅貨』・『一枚の切符』・『恐ろしき錯誤』

二銭銅貨

乱歩の記念すべき処女作であり、ポーの「黄金虫」の向こうを張った暗号が楽しめる作品です。
まずなにより、銅貨に暗号を隠すっていう発想がすごいし、それを解こうとする友人の努力と想像力に感服ですな。
暗号自体も結構というか、かなり複雑で当時の時代を考えるとすごい事だと思います。
今読むと、短編ということもあってかなりシンプルなので、満足度は薄いかもしれませんが、それでも結末までわくわく出来ると思います。
それにしても、そんなところにお金を隠すのは絶対ないだろ~と思うのは僕だけでしょうかね・・・



『一枚の切符』(ネタバレ有り)

個人的には「二銭銅貨」より好きかも・・・。
まず犯行そのものが名刑事がわざわざ出馬しなくてもいいだろ、と思うぐらい杜撰なのがミソですね。足跡の謎なども、犯人は自分だと言ってくれっていうようなもんで。
でも実はそこには被害者自身が仕掛けた巧妙(?)な罠の存在があるんですね~。
なぜ、?マークをつけたかというと、靴のくだりがあまりにも・・・っていうところがあるんですよね。
この作品の何が気に入ってるかというと、真の探偵役が逮捕された人物の無罪を立証する為の貴重な物証となる一枚の切符の存在が探偵役自身が仕掛けたフェイクの証拠だというところです。
この微妙な読後感がのちのちの乱歩が垣間見える気がしていいんですよ。



『恐ろしき錯誤』(ネタバレ有り)

乱歩自身はこの短編の出来にかなり不満足なようですが、タイトルを読んだだけでなんとなく狙いが読めます。
冒頭に事件の謎が提起され、主人公が犯人と信じるものへの告発をするわけですが、相手の態度に自分の疑惑に対する確信を得て残酷な事実を伝えます。
実は疑惑の対象は他にあった訳ですが、ある物証を突きつける(死んだ妻の写真を入れるメダル)事によって相手の反応を確かめる訳ですが、実は間違った物証を提示してしまったのではないかと主人公は疑問を抱き始め、さらには犯人と確信した人物から届いた手紙によってついに主人公は発狂してしまう訳ですが・・・・
うーん、それなりに面白いし、こういう疑問を感じてしまうことは多々あると思うんですけど、なんだろう文章の問題なのか、これで発狂するのかと・・・・
乱歩らしさは垣間見ることは出来るのですが、自身が語るとおり小説の出来としては落ちるのかなあ。