「ミステリとの出会い」・中学国内編~『本楽大学ミステリ学部』第1回レポート、その3~

(2007.1.23 ブログ再録)

 

さてさて、『ミステリとの出会い』中学生編でございます。
小学生編はこちら

 

~中学生・国内編~

 

中学生になると行動範囲も広がります。
僕の場合、地元の中学ではなく広島市内の私立校に通ったので、その通学途中にいろいろな古本屋を覗く習慣が出来ました。
また、広島市内の市立図書館・県立図書館、そして学校の図書館を利用。そこには無い本であれば、古本屋で購入です。

 

最初に思い出すのがいわゆる多作作家さんとの出会い。
近所の福祉施設で行われたバザーで、赤川次郎『三毛猫ホームズの騎士道』内田康夫『後鳥羽伝説殺人事件』を20円ぐらいで購入。
どちらも大変読みやすく、作者の個性が発揮されてる作品。西村京太郎氏も含めて古本屋でも安く大量に購入できるので(笑)、たくさん読みました。
その中で赤川さんなどは『三毛猫ホームズの推理』(晴美のキャラが違うのにビックリ)『マリオネットの罠』(記事はこちら)などの傑作とも出会いましたし、モダンホラー系の作品は大好きでした。
内田さんは『平家伝説殺人事件』(記事はこちら)のヒロイン稲田佐和がお気に入りで彼女とどうなるんだと気になっていたのですが、それ以降登場せず結局『浅見光彦殺人事件』を最後に読むのをやめてしまいました。
西村京太郎氏はやはり列車アリバイ物をたくさん読みましたが、この頃一番印象に残っているのは明智小五郎、クイーン、ポアロ、メグレ警部が競演するというオマージュ作品『名探偵なんか怖くない』のシリーズが大好きでした。

 

同時に小学生の頃から読んでいた横溝・乱歩にも相変わらず熱を上げます。横溝は古本屋で未読作品を漁り、乱歩は県立図書館に所蔵されている全集を読破しましたねえ。ちなみにお気に入りの横溝作品はこちらの記事(前半後半)を。乱歩は短篇の傑作郡、『孤島の鬼』などの長編でもなくお馬鹿エログロの極致『盲獣』がお気に入りという変態っぷりを見せてます(笑)。

 

他にも国内古典への挑戦にも磨きが掛かります。
当時絶版だった鮎川哲也氏の『りら荘事件』の本格の美学に興奮し、『黒死館殺人事件』(記事はこちら)、『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』(記事はこちら)のアンチミステリ3大作品を読んだのもこの頃。
それぞれに思い出はあります。『黒死館~』はあまりの難解さに1度は挫折(最近記事にしましたが、採点は不能でした・笑)、『ドグラ・マグラ』は強烈すぎてちくま書房の全集をすべて購入してしまいました。そして『虚無~』は今に至るまで僕のミステリの最高峰という扱いになっております。

 

そして忘れもしない中学2年生、いわゆる新本格と運命的な出会い(?)を果たします。
当時の担任がホームルームで紹介した本、それが法月綸太郎の処女作『密閉教室』(記事はこちら)でした。
実をいうとこの担任、法月氏の中学・高校時代の友人だったのですね(この縁で一度だけお会いすることが出来ました)。
さっそく本屋に駆けつけ作品を探しましたが、なぜかタイトルを忘れていて仕方なく購入したのが『頼子のために』記事はこちら)でした。
読み終わったときの衝撃は今でも忘れません。もしかしたら先にクイーンのライツヴィル物を読んでいたならここまでの衝撃を受けなかったかもしれませんが、これも運命でしょう。
これ以降なぜか『誰彼』『雪密室』(記事はこちら)→『密閉教室』という発売順をさかのぼるという暴挙(?)を犯しつつすべての作品を読破しました。
同時に新本格の幕開けを飾った『十角館の殺人』を初めとする館シリーズ我孫子武丸氏の『8の殺人』を初めとしたシリーズ、名探偵に信濃譲二を迎えた『長い家の殺人』(
絶版)など、当時発表されていた新本格黎明期を代表する作家陣の本を読み漁る。

 

そして島田荘司である。
実をいうと新本格の作家さんよりあとに島田作品を読んでいるのである。普通これぐらいのミステリ読書量であればすでに読んでいそうなものだが、不思議なものでこの段階まで未読だったのだ。父親の本棚にあったにも関わらずである。
最初に読んだ作品は御手洗物の『暗闇坂の人喰いの木』(記事はこちら)か吉敷物の『北の夕鶴2/3の殺人』(記事はこちら)だったと思う。どちらもシリーズ最初の作品ではないところがいい加減だ。
ただ初読当時は『暗闇坂~』と同じ年に発表された綾辻氏の『霧越邸事件』の世界観の方が好みだったような気がして、こんなものかと失礼な感想を覚えた記憶が^^;;
ただそれも『占星術殺人事件』(記事はこちら『斜め屋敷の犯罪』(記事はこちら)という初期の大傑作を読むにあたって、自分の不明ぶりに恥じ入るばかりだったが。

 

他にも印象に残った作品をいくつか。
北村薫『覆面作家は二人いる』(記事はこちら)、中西智明の『消失』(絶版)、山口雅也『生ける屍の死』太田忠司『僕の殺人』(絶版)、竹本健治ウロボロス偽書』(絶版)などだ。
北村氏に関しては『夜の蝉』(記事はこちら)が初めての作品だったのだが、『覆面作家~』のヒロイン我妻千秋のキュートっぷりにノックアウト、これ以降北村氏は僕のマイ・フェイバリットな作家の一人になった。
他の作品はどれも一筋縄ではいかない。『消失』は被害者が○○だし、『生ける~』はその世界観と完成度は80年代を代表する作品だと思う、『僕の殺人』は試みのインパクトがあったし、『ウロボロス~』はもうメタの極致(笑)。
多感(?)な中学時代にこれらの捻くれたミステリをたくさん読んだことが、ミステリなら基本なんでもOKの僕の読書感を生み出した気がする(笑)。
また島田氏の推薦文に疑問を持ち始めたのも、この頃に読んだ司凍季『からくり人形は五度笑う』だったような気がする(笑)。

 

また図書館では東野圭吾の作品を読み漁ったことをここに付け加えておく。当時好きだった作品は『放課後』『学生街の殺人』『眠りの森』だったかな。
海外作品については次の記事にて触れようと思う。

 

なお今回の記事作成に関しては、『本格ミステリ・クロニクル300』を参考にいたしました。