たいりょうのちょっと一息

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『陽気なギャングの日常と襲撃』(☆3.7)

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人間嘘発見器成瀬が遭遇した刃物男騒動、演説の達人響野は「幻の女」を探し、正確無比な"体内時計"の持ち主雪子は謎の招待券の真意を追う。そして天才スリの久遠は殴打される中年男に
―史上最強の天才強盗4人組が巻き込まれたバラバラな事件。だが、華麗なる銀行襲撃の裏に突如浮上した「社長令嬢誘拐事件」と奇妙な連鎖を始め…。絶品のプロット、会話、伏線が織りなす軽快サスペンス!!
伊坂ブームの起爆剤にして、映画化で話題の「陽気なギャング」ここに待望の復活。

yahoo紹介より

 

初めて読んだ伊坂さんの本が『重力ピエロ』とシリーズ前作『陽気なギャングが地球を回す』でした。
そのときは『重力ピエロ』に比べると、完成度的に物足りく感じたものでした。
そういった意味では、今回の作品は楽しめました。

 

第1章はそれぞれの主人公たちが巻き込まれた事件を描いた『小説NON』連載の短篇を大幅に改編したもの。
第2章以降は、令嬢誘拐事件を中心に第1章で語られた事件が思いもかけずリンクしていきます。
この第1章、それぞれの性格が上手く描かれていて面白いのは面白いのですが、すこし会話の視点が分かりづらく読みにくく感じました。
振り返ってみるとそう感じたほとんどの部分が、長編用に改変された部分のような印象のところ(実際元の短篇を読んでないのでわかりませんが)だったので、完成された短篇を直すといことの難しさをちょっと覗いた気分。

 

第2章は、前作に比べるとキャラクターの性格がより深くなっている感じがしました。
前作は主人公グループの1人が事件に深く首を突っ込んでいたせいか、主人公達の感情のブレもあり単調な印象があったのですが、今回はそれぞれの性格に基づいた会話の軽妙さとともにその裏にある感情も滲み出てくるようで、より洗練されているような気がします。
元々会話表現の上手さには定評がありますが、その軽妙さの裏側にメッセージを含ませるという伊坂さんの特徴は他の作品と比べても遜色はないと思います。

 

小説としては、物語の終わり方に少々収まりの悪さを感じたので、読後の余韻という意味では僕の好きな伊坂作品に比べるとやや物足りない。
そういった意味では少々物足りないし、他の登場人物に比べると響野の演説の達人っぷりが伝わってこないのは勿体無いかな~。
このシリーズがまだまだ続くのであれば、さらに登場人物の個性が物語の中で生きてくればもっともっと面白い作品になると思います。


採点   3.7

(2007.1.23 ブログ再録)