『ボトルネック』(☆3.6) 著者:米沢穂信

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恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。

yahoo紹介より

 

初めての米沢穂信。うーん、なんとも難しい、読んでてとにかく重かった。
自分自身の存在しないパラレルワールド、繰り返される間違い探し、無邪気な悪意、人格の模倣。
わずか250ページの本の言葉がとにかく突き刺さる、突き刺さる。

 

とにかくどこか感情の醒めた、大人びたというより大人な主人公。使っている言葉も少年というより大人だ。
だけど、それはあくまで少年が被っている仮面なのかもしれない。
傷ついた事を忘れようとする自分を護るための仮面を被るという行為を、片っ端から叩き潰されている気分。

 

ここで主人公が突きつけらた(あるいはそう感じた)現実、そしてたどり着いた結論の重さには言葉もない。
まだまだやり直せると思うには余りに辛い光景。
これもまた青春なんだろうか。

 

自分自身はわりと恵まれた環境に育ってきたと思う。
でもどこかで内面を隠し生きてきた部分もある。実際高校時代にはその仮面が外れかけてどうしようもなくなった事もある。
事故で死んだ恋人ノゾミが選んだ生き方もまた、仮面を被るという行為だったのだろう。
ただしそれは他人の仮面を被るという事。
それによって仮面を被られた他人は彼女の重さを背負う事になってしまったいるのかもしれない。
結局それは人は人と助け合っていかなければ生きていけないともそうでないともいえる。

 

ああ、何を言ってるのか自分でもよく分からん。
それぐらいいろんな意味で混乱してるのだ。
同じ日に読んだ『結婚なんてしたくない』とかなり対照的だ。
でも誰かにどちらを読ませるといわれるならこちらだろう。
ただし積極的にこれは面白いよと勧められる小説ではない。

 

それにしても最後の電話の部分だけが消化不良になってしまった。


採点   3.6

(2007.1.10 ブログ再録)