たいりょうのちょっと一息

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『仮面幻双曲』(☆2.8) 著者:大山誠一郎

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双子の弟から兄への殺人予告。そして、事件は起こった。一見不可能に思える殺人事件の謎に、若き探偵が挑む。その先に待っていたのは意外な結末だった…。小学館eBOOKSおよび携帯で配信された作品を加筆訂正し単行本化。

yahoo紹介より

 

2007年度『本格ミステリベスト10』第10位。
僕がよく覗くミステリサイト『幻影の書庫』の記事でも絶賛されていたので期待していたのですが・・・
うーん、正直この作品は苦手ですな~。

 

終戦直後の時代設定、湖畔の町にある裕福な家で起こる殺人、そして双子・・・読み始めると同時に感じたのは横溝正史現代版のような佇まいということ。
そして明らかに双子を使ったトリックというのを匂わせつつ、正々堂々と読者を騙しきるスタイル。
真相が明らかになった時、実は最初の1ページから欺瞞に溢れている事に気付かされる。
パズラーとしてのセンスはなかなかのものだと思う。

 

思うが、非常に読みにくいのだ。なぜならとことん盛り上がらないから(笑)。
iizuka師匠冴さんも記事で語っているように時代の雰囲気が非常に薄い。
なぜこの時代設定であるかという必然性はきちんとありそれに関しては文句をつけるつもりもないのだが、冒頭で横溝御大の匂いを感じさせてしまう分、どうしてもそれを求めてしまった自分がいた。
作者としてはパズラー的要素を最大限に描こうとして、あえてそのような描写をしていないのかもしれない。もしかしたら横溝御大の戦後とは違う異世界の物語として読まなければいけないのかもしれない。
仮に異世界であったにしても、警察の捜査の杜撰さが大いに気になるところであった。
解決編で双子トリックの利用法が明らかになるわけだが、正直そんなのいくら馬鹿でも分かるだろうと突っ込んでしまった。まあなにしろ被害者の血液型を調べなかったりするぐらいの警察だからさもあらんという事なのか。。。

 

それ以上に気になったのは、文章の稚拙さ。
まったく魂の感じられない台詞、いくらパズル重視といってもあまりに流れを無視した発言が多い。一瞬これは舞台の台本で、不足する流れの部分は役者の演技力(この場合は読者の想像力)で補えという事かと思ってしまった。
さらに書き割りのような地の文も頂けないなあ。最低限の状況は説明しているし、トリック的なもの、あるいは読者がきちんと犯人を当てられる為の配慮などは感じられるのだが、それゆえなのか意味の無い情景描写の繰り返し(数ページ前で書かれた部屋の描写が同じように繰り返されたのには参った)や名前が会話で出てくるにも関わらず地の文で「顎の尖った女」と繰り返す(同じ場面で他の人物は普通だっただけに、ついつい作者の叙述トリックかと疑ってしまった)。
せっかくプロットそのものは優秀なのに、これでは小説として読もうとする読者に対する吸引力に欠けて勿体ないと思う。

 

良くも悪くも新古典ともいうべき味わいの作品であるゆえに、パズル的要素優先か小説的要素優先化で少々好みが分かれる作品だと感じた。
それにしても『本格ミステリベスト10』での解説にある、第2の事件以降の展開における著者も気付かなかった大きなミスってなんだろう。僕にもわからなかったので気になるなあ。。。

 

採点   2.8

(2007.1.5 ブログ再録)