『θは遊んでくれたよ』(☆3.0) 著者:森博嗣

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飛び降り自殺とされた男性死体の額には「θ」と描かれていた。半月後には手のひらに同じマークのある女性の死体が。さらに、その後発見された複数の転落死体に印されていた「θ」。自殺?連続殺人?「θ」の意味するものは?N大病院に勤める旧友、反町愛から事件の情報を得た西之園萌絵らの推理は…。好調Gシリーズ第2弾。

yahoo紹介より

 

『Gシリーズ』第2弾でございます。
今回は死体に「θ」の記号が遺されているが果たしてのその共通点は・・・というミッシング・リンクものですね~。
前作「φ~」の記事でも触れましたが、それまでのシリーズ(特に『四季』)に較べると圧倒的に読みやすい。
薀蓄を語る人間もほとんどいないし、今作のメイン的探偵(?)の海月君なんてほんと解決の部分でしか喋らないし(笑)。

 

同じようなタイプのミッシングリンクといえば、ウィリアム・L.デアンドリアの名作が思い浮かぶがそちらの完成度には及ばないもののきちんと筋は通っているように思う。
ただそれはあくまで森ミステリィとしてのこと。結局事件の裏に見え隠れする「あの人」の存在意味が何だったのかさっぱりわかりませんからな~。
もしかしたらシリーズ後半で大ドンデン返しがあるのか???(←そう思わせて続編を買わせる手法かも・笑)
ブログ仲間の冴さんが記事で触れられておりましたが、最後の現場に残された口紅の問題も実はこっち系の伏線だったりして・・・まあ、それはそれでどうなんだと思うし、冴さんの指摘についてはまさにおっしゃる通りではあります。

 

面白いのは結局動機についての解明はまったく行われてないってことかな。あくまで目の前の現象に関して解明するというスタンスは、森さんらしくもあり、新境地という意味でらしくないのかもしれない。これまでのシリーズ作品は理系ミステリィといいながら、その動機が極めて文学的であるのが森ミステリィの特徴だったと思うからである。
そういった部分の未解明のところが、また読者が背後に「あの人」の存在を感じる理由かもしれない。
ただ結局それまでの「S&M]「V」「四季」を読んでないと、面白さという意味ではかなり減じるかもしれない。

 

それにしてもなぜ森さんは独特のカタカナ表記を使うのだろう。
ミステリィ」はともかく「ロッカ」(コインロッカーとかのロッカー)、「シリアルキラ」(←いわゆるシリアルキラーですな)。
普通に読みにくいし、使い分けの基準がよく分からないのでもう少しなんとかしてほしいんですけど。。。


採点   3.0

(2006.12.29 ブログ再録)