『四季 秋』(☆3.5) 著者:森博嗣

f:id:tairyodon:20190421070316j:plain

手がかりは孤島の研究所の事件ですでに提示されていた!大学院生となった西之園萌絵と、彼女の指導教官、犀川創平は、真賀田四季博士が残したメッセージをついに読み解き、未だ姿を消したままの四季の真意を探ろうとする。彼らが辿り着いた天才の真実とは?『すべてがFになる』の真の動機を語る衝撃作。

 

いよいよ四季シリーズも三作目。予想通り西之園萌絵登場しました。
さてさて前回で親殺しを扱ったので、今回は長崎のあの事件あたりの四季の心模様を描くのかと思ったら完全に『S&M』『V』シリーズを読んだ人の為のサービスのような内容でした。

 

粗筋では『すべてがFになる』の真の動機を語る・・・って書いてありますが、それは結局どうでもいいよね。
っていうか細かいところは忘れてるし、四季の言葉から犀川が導き出した推論もまあ彼女ならそれぐらいと納得してしまいました(笑)。
だいたいレゴブロックの利用価値は分かりますが、なぜレゴでなければいけなかったのかという理由がよくわかりません。
別に他のものでもいいじゃん。まあ、犀川と保呂草を誘導するためといわれればそれまでなんですけどねえ。
ううむ、もはや彼女、神の領域の住人なので凡人には理解できないのか?

 

もうこの小説の見所は、犀川と保呂草の再会。そして萌絵と瀬在丸紅子の初顔合わせ(林さんも登場するのは意外でしたが)でしょう。
特に犀川と保呂草はいったい何年振りなんでしょう。彼の顔を見た時、犀川は一瞬ですがへっ君に戻りましたね。
っていうか、もうほとんどバレバレですが紅子の子供が犀川、儀同世津子が林さんと七夏の子供だっていうのがはっきりと書かれましたね。
いやあ、よかったよかった。それにしても、犀川・・・いや、へっ君、保呂草さんに「ただの知り合い」って。。。
そういえば保呂草&各務さんも無事(?)結ばれたようでよかったよかった・・のかな?

 

そして萌絵と紅子の初顔合わせ。いやあ、怖い怖い。一体紅子が何を語るのか。
っていうかまだそこに住んでいましたかって感じではありますが、なんだか丸くなったような気がしました紅子さん。
萌絵も最早かつての才女ぶりは影を潜めて、すっかり恋する女性になってますねえ。
しかしこうして会話シーンを読んでると、この二人結構いい嫁姑関係になりそう。
まあ、そうなるまでにはとにかく犀川先生、はっきりさせてくださいな!!指輪を渡してるんだしさあ!!

 

あ、四季ですか?
えっと・・・なんといっていいやら。この小説内では生身の四季が登場しないんでねえ。
彼女に会った人達がそれぞれ彼女を語る構成ですからね。
イタリアで萌絵の前に彼女が現れましたが、本当に夢の中だったんですかね~。
でもその前の映像での登場シーンを考えると、ここで彼女を出さなくてもよかったんじゃないかとは思いますが。

 

まあ懐かしい名前も出てくるし(っていうか秋野っていう保呂草の偽名なんてすっかり忘れてましたよ。)、本当ファンの為の小説。
そういう意味では読みやすかったです。お得意の短文の羅列は軽く読み流しましたが(笑)。



採点   3.5

(2006.10.27 ブログ再録)