『QED~神器封殺』(☆3.8) 著者:高田崇史

f:id:tairyodon:20190421062346j:plain

和歌山での滞在を延ばした桑原崇たち一行。そこで待ち受けていたのは、奇妙な殺人事件と、自らを「毒草師」と称す男・御名形史紋だった。和歌山を拠点に起きる数々の奇妙な事件の謎、崇と史紋が突き当たった重大な歴史の謎。古の神々と三種の神器に隠された真実とは?!崇の怒濤の推理が繰り広げられる。

yahoo紹介より

 

前作『~熊野の残照~』を受けた作品。それぞれ単体でも一つの作品として読めますが、出来るなら続けて読んだ方が。

 

それにしてもまさか殺人事件よりも歴史の謎の方が袋綴じとは(笑)。
確かに殺人事件の方は途中で犯人が自白しちゃうし、殺人方法のトリックにしてもこれを出されるとねぇって感じ。
さらには何故犯人が死体の首と片方の手首を切ったか、という謎については参考図付きの解決編を読んでも相当無理を感じました。結局犯人の動機もいまいちピンとこなかったしね。

 

それよりも歴史の謎の解明の仕方がなかなかに凄かった。
元々このシリーズは現実と歴史の謎を並列する場合のバランスにおいて明らかに後者にウエイトが置かれてますし(前作がその極みだと思ってます)、それぞれを上手くリンクさせることに関しては正直上手くない。
ということはほとんど歴史の謎そのものに興味が持てるかが評価の大半に繋がるという意味では、「三種の神器」という比較的ポピュラーなネタと袋綴じ部分における豪快な投げ技の決まり具合は、「~式の密室~」以来の快感ではないかと。

 

もちろん弱点もある。
最後の解明の部分において、京都を中心とする場合・奈良(飛鳥)を中心とする場合の使い分けの部分が恣意的に選ばれていると採られても仕方のないものになっているという事。導き出される解答そのものは、およそ偶然というにはあまりに暗喩的な一致を見せるだけに、どういう形でももう少しその部分の論旨に確証が欲しかった。
とはいってもこの本はあくまで小説であり、歴史に関する研究書ではない(そもそも著者自身が専門的な勉強をしたわけではなく小説を書くたびにこれだけのネタを仕入れ構築するというから恐れ入る)という事を考えたら、これだけの解答を出したのは立派だというほかはないのではないか。

 

歴史の検証という部分を離れても、御名形史紋というまた怪しげな人物が準レギュラー入りして崇と奈々の間をかき回してくれそうだし、シリーズとしてももしかして転換期の作品となるのかもしれない。
個人的には小松崎と奈々の妹の関係も気になるんだけど(笑)


採点   3.8

(2006.10.17 ブログ再録)