たいりょうのちょっと一息

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『重力ピエロ』(☆5.0) 著者:伊坂幸太郎

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ルールは越えられる。世界だって変えられる。読書界を圧倒した記念碑的名作。文庫化にあたり改稿。兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。

yahooより

 

最近の一人伊坂祭り状態に便乗して、久しぶりの再読。
よく考えたらこの作品が初めての伊坂作品であり、未だに著者の作品の中でもNo.1のお気に入り。
そういう本の再読って、「あれ、この本ってこんなもんだっけ?」という事がままあるが、この作品に限ってはその評価は変わる事はなかった。

 

さて自分はこの小説の何が好きなんだろう、と考えたら作品に散りばめられた寓話、あるいは比喩的会話の組み立ての部分なんだと思う。
もともと伊坂作品ではこういった部分は多く見られるわけだが、なかでもこの作品は半分以上がそれで組み立てられてるんじゃないかと思うぐらいその割合が多い。
寓話や比喩というのは作品の世界をイメージする為の助けになると同時に、使いすぎるとそもそもの作品の本質が見えづらくなる怖さがある。
それがこの作品においてはそれらを積み重ねる事により物語を構築している。これは最初の設計図が相当きちんとしていないと出来ない事であろうと思うし、それを鮮やかに決めてみせる手腕はさすがというしかない。

 

一方でこの小説はレイプという犯罪を取り上げられている。
暴力で女性を支配する、まさに唾棄すべき犯罪であり、その被害者に与える影響というのは想像を絶するものがある。
そんな犯罪の被害者である家族の行き方があまりに前向きなところがある分ややライトに感じる部分もあるが、物語の隙間から滲みでてくる苦悩は感じ取れるし、特に直接的被害者である母親が競馬場でも無謀な賭けに挑む場面などは、軽妙さと人間の苦悩が結びついた名場面であると思う。

 

と、ちょっと理屈を並べてみたが小難しいことはいらない、ただ単純にカッコイイなあと思う。
そして心の底で無条件にお互いを信じるこの家族の強さはほんと羨ましいとさえ感じる。もちろん表面上はお互いを疑ってたりするけれども、最後には相手を信じてなきゃだせない結論を出してみせる。
特に、事件がとりあえず解決して病院に訪れた春に父親がかける一言、「おまえは俺に似て、嘘が下手だ。」、てらいも無く自然にこんな台詞がいえる親父、やばいっすわ。

 

ツモ爺(津本陽)さん、どうせ引用するならこれぐらい作品に消化させてみてくださいよぅ~。


採点   5.0

(2006.10.8 ブログ再録)