『捩れ屋敷の利鈍』(☆3.6) 著者:森博嗣

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秘宝"エンジェル・マヌーバ"が眠る"メビウスの帯"構造の捩れ屋敷。密室状態の建物の内部で死体が発見され、秘宝も消えてしまった。さらに、完璧な密室に第二の死体が!招待客は保呂草潤平、そして西之園萌絵。探偵は前代未聞の手法によって犯人を言て当てる。

 

ついに保呂草潤平と西之園萌絵が夢の競演(?)ですねえ。
ただしVシリーズのいつものメンバーや、犀川が直接関わらない(厳密には紅子と犀川は登場しますが)のが残念ですが、国枝さんが登場したので許します。しかも怒鳴るし、ファンにはたまりません♪しかもエンジェル・マヌーバ再登場だし。各務さんが登場しないのが不思議なくらいです。

 

で、なんじゃこの「捩れ屋敷」は(笑)。
メビウスの帯をそのまま立体化して建物にしてしまうとは、あの中村青司もびっくりですね。あまりにヘンテコすぎて、構造を理解するのに時間が掛かりました。その上密室の中で殺人事件が起きてしまうんですから、頭が混乱しまくり。
で、さらには小規模の密室殺人まで別の建物で発生して、まさに「密室本」(講談社の企画)にはピッタリといったところでしょうか。

 

ちなみに後者の密室は分りました。可能性を考えていくとそれしかないしまあ森さんらしいといいますか。
で前者のトリックなんですが、言われてみれば「ああ」という感じではあるんですが、一点とても重要な部分について描写が欠けている(少なくともノベルズ版では)ので、解けなくてもまあいいじゃんと。最終的な結果に関してはある意味落語の下げみたいな感じですね。
ただ分量は少なめなのでわりとシンプルに楽しめる構造の本ではないでしょうか。

 

そしてエピローグ。いやあ意味深です。
紅子と萌絵の共通点に保呂草より前に気付いた古い友人とは誰なのか。
これはあの人ですよねえ。ということは前作の記事の最後に書いた予想が当たっているのかなと。
この作品がS&Mシリーズの「今はもうない」と同じシリーズ8作目というのもユニークだな。森さん狙ってたのかなあ(笑)。
あと2冊ですね、これは楽しみです。



採点   3.6

(2006.9.13 ブログ再録)