『六人の超音波科学者』(☆3.0) 著者:森博嗣

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土井超音波研究所、山中深くに位置し橋によってのみ外界と接する、隔絶された場所。所内で開かれたパーティに紅子と阿漕荘の面々が出席中、死体が発見される。爆破予告を警察に送った何者かは橋を爆破、現場は完全な陸の孤島と化す。真相究明に乗り出す紅子の怜悧な論理。美しいロジック溢れる推理長編。

 

Vシリーズ第7弾。相変わらず事件に巻き込まれっぱなしの皆さんですね~。
そして森さんには珍しい(でもないか)いわゆる「嵐の山荘」物。とはいってもいきなり橋がドン!!と爆発するのには笑ってしまいましたが。

 

ストーリー展開としては、シュチュエーションと同じく割とオーソドックスな代物です。
閉空間で起きる殺人事件。そこに紛れ込んだ探偵(あるいは刑事)が犯人側の不確定要素となって事件が思惑からどんどんずれていく。
まあ正直犯人達の行動そのものは杜撰きわまりないといった感じがしないでもありません。
探偵側、あるいは証人側をごまかす算段そのものが理系の人達が集まったとも思えない穴だらけのロジックです。
逆にその穴だらけのロジックを突く事によって真相が明らかになるという意味においては論理的な作品かもしれないですね。

 

犯人の動機に関しては、ある分野における一般的な認識(おそらくは偏見極まりない認識ではあるが)の元に組み上げられていて、その方向からのアプローチにおいても真相にたどり着けるという意味で、森さんにしては珍しいのかもしれません。これに関してはあくまで動機を組み上げる上での副産物要素かもしれません。
森さんファンには物足りないかもしれないですが、ミステリファンには受け入れやすい作品ってことですかね。
それにしても練無のピンチにはドキドキしましたよ~。そういえば彼の女装が第3者にばれなかったのもこの作品が初めて?

 

全体としては可も無く不可も無くっていったところでしょうか。

 

以下ネタバレでもないですが、ふと思った事です。

 

一体このシリーズの時代設定はいつなんだろう?
事件の中で博士の一人が研究されているシステムっていうのが、作中では将来一般的なシステムとして利用されていくだろうと予告されてますが、これって現在利用されてるよなあ。しかも今回の特殊な設定の中で携帯電話を使ってないし。そういえば今までの作品でも無線が出てきても携帯を使うシーンなかったよね。
これは「夢・出逢い・魔性」のTV番組の雰囲気の古さ以降気になっているんですよねえ。しかもあえてその描写を避けているような気がするし、この作品で現代が舞台じゃないというのは確信が持てたような気はするんですけど。
なにか仕掛けがあるのかなあ。
『月~』の時は実は紅子さんが四季博士だったりしてと思ったのですが、古さを考えると時代が合わないのかなあ。(四季博士が一体いくつなのか分らないんだけど)。
となると仕掛けとして怪しいのは紅子さんの子供へっくんなんだよなあ。。。
今回の作品でもとんでもないエピソードが披露されてるし、この偉さ、もしかしてへっ君はあの犀川創平なのかなあ。。。
でも両親と苗字があわないよねえ。
ってそういえば林さんて苗字なのかなあ。まさか犀川林?
この辺って最後まで読めばわかるのかなあ?


採点   3.0

(2006.9.12 ブログ再録)