『人形式モナリザ』(☆2.8) 著者:森博嗣

f:id:tairyodon:20190407081906j:plain

避暑地に建つ私設博物館「人形の館」。そこに常設されているステージで、衆人環視の中「乙女文楽」の演者が謎の死を遂げた!被害者の一族では、二年前にも、新婚の青年が殺されていた。悪魔崇拝者だった彼は、「神の白い手」に殺されたのだと、若き未亡人は語るのだが!?ラストの一行で、読者を襲う衝撃の真実。

yahoo紹介

 

Vシリーズ第2弾です。
いやあ、困った困った。これをどう評価していいものか^^;;

 

そもそも大筋の殺人事件の犯人とトリックの謎は簡単。発行順でいくと問題作『笑わない数学者』なみに簡単だと思う。
多分勘のいい人は最初の殺人事件が起こるより前にわかるのではないでしょうか?
ちなみに僕は第1の殺人事件の段階でわかりました。

 

また作中に登場する故人が遺した「モナリザ」の行方もこれまたちょっと考えれば分ります。
この辺はおそらく作者もあえて簡単にしている風なところがあるんでしょうね。

 

結局この小説の肝は動機の部分なんでしょうね。トリックから犯人がわかるところまではスムーズに行きますが、さてではなぜ犯人が殺人を犯したのか。
この部分に関しては過去のミステリ作品にも登場するモチーフだとは思いますが、とりわけこの作品は真正面から切り込んでる気がしますね~。
ある意味隠してない。隠してないの気付かないみたいな。
S&Mシリーズに較べてこのVシリーズのミソはこの動機の見せ方にあるのかもしれませんね~。

 

そして後半、主人公の一人紅子さんが襲われた事件に関する真相に関してはちょっと分らなかったですね~。
この設定はシリーズ全体の楽しみの為の伏線なんでしょうか?
ただ紅子さんと保呂草さんの交わす会話を読んでいると、なんだかあの人を思い出してしまうんですが。。。。

 

まあそれはおいといて。
問題はyahoo紹介にもあるラストの1行の衝撃なんですが・・・これはどうなんでしょう。
いや間違いなく衝撃を受けると思いますよ、はい。
犯人の動機、そして作品全体のモチーフである人形の在り方という意味ではこのラストもありなのかなとは思います。
思いますが、それを納得するには少し材料が薄い気がするんですけどね~。

 

なんだか森さんがこのラストを隠す為に偽装(?)した物語があまりに立派な隠し方だったせいで、逆にそれが仇になってしまったというか。
まあ、全てを読者に委ねるという考え方もあるのかもしれませんが、だったらもう少し書き足して欲しい部分もあるなあ~。

 

結局ラストの1行をどう評価するかでこの作品の評価が変わってくるんだという気がします。


採点   2.8

(2006.8.22 ブログ再録)