『黒猫の三角』(☆4.0) 著者:森博嗣

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一年に一度決まったルールの元で起こる殺人。今年のターゲットなのか、六月六日、四十四歳になる小田原静子に脅迫めいた手紙が届いた。探偵・保呂草は依頼を受け「阿漕荘」に住む面々と桜鳴六画邸を監視するが、衆人環視の密室で静子は殺されてしまう。森博嗣の新境地を拓くVシリーズ第一作、待望の文庫化。

 

S&Mシリーズに続くVシリーズ。このシリーズは4作目ぐらいまでは読んでいるのですが、はっきりいってほとんど憶えていませんです、S&Mシリーズ以上に。
だから再読というよりはほとんど初読ですね。

 

いやあ、結構やられましたね、作品そのものの構造に。
はっきりいって非常に感想が書きにくい作品ではありますね。トリック云々よりも犯人の正体や動機の見せ方の面白さは上手だと思うなあ。
犯人については正直アンフェアぎりぎりな部分もありますが、でも僕はいろいろな事情も含めて見事に作者の罠にはまったと思います。これはこれでいいんじゃない。
動機に関していえば、それそのものは結構手垢のついたものだと思いますし、これをいい始めたらミステリは・・・みたいなところもあるんですが、森さんお得意の数学理論を並列することによって一定以上のものに昇華しているのではないと思います。

 

数学理論とはいっても、S&Mシリーズよりは専門性は薄くなっていて割と読みやすくなってると思います。
登場人物達も前シリーズよりいい意味で類型的なキャラクターになってるというか、よっぽど感情移入はしやすいぞと。
個人的には紅子さんのキャラは結構好きです。まあ人気はあまりなさそうですが、前シリーズの西之園さんも好きだったし許してください。

 

それにしてもシリーズ1発目からこれをやるか~、というのが正直なところで以降のシリーズを読むのが結構楽しみになってます、はい♪



採点   4.0

(2006.8.19 ブログ再録)