『カンニング少女』(☆4.5) 著者:黒田研二

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都立K高校三年四組、天童玲美。入試を四ヵ月後に控えた十月、彼女はなんとしてでも最難関私大・馳田学院に合格しなければならなくなった。不慮の事故で亡くなった姉、芙美子の死の真相を探るためだ。玲美が頼ったのは、クラスメイトで成績トップの超優等生、愛香。そこに陸上インターハイ選手の杜夫と、機械オタクの隼人を加えた三人が、彼女の参謀となった。決して成績はよくない玲美。彼らが出した結論は、カンニングによる入試突破だった。ひとりの少女が、前代未聞の闘いに挑もうとしていた。教師に、学校に、そして心の中の何かに、いま玲美は宣戦布告する―。青春ミステリー。

Yahoo紹介

 

「クレイジー・クレーマー」に続き、連続して読み終わりました♪
前者も大変面白かったですが、これにはやられたな~。

 

あらすじから分かるとおり、本編の見せ場はいかにカンニングを成功させ試験を突破するのかという部分ですよね。
カンニングといえば、ペーパーを筆箱にかくしたり文房具に小さな文字でいろいろ書き加えたりとかが思いつきますが、この作品に登場する隼人が編み出すハイテクカンニングマシーンはちょっと反則じゃねえかというぐらい凄い代物で、その部分を読みながら昔見たカンニングの映画(安室が主演したのじゃなく、その元ネタみたいな海外のB級映画)を見た時と同じ、ワクワクした気持ちで読めました。
このあたりのノリは無茶で楽しかったあの頃の青春を読み起こさせてくれますよね~。

 

物語がもう一つの主題である、「なぜ姉は死んでしまったのか?」という謎の真相に差し掛かった時に、今まで見ていた物語の中からもう一つの青春が浮かび上がってきます。
青春の特権ともいうべき青臭い程の喪失感への純粋な戸惑い、それに対する答えの見せ方の巧さは憎たらしいほどです。
玲美が協力してくれた友人達へ贈った言葉、嫌味なくらい純粋な言葉だけれども決して嫌味じゃない。
これはもうくろけん節のなせる技なのか?

 

随所にみられる伏線の巧みさ、予定調和な真相へ向かう伏線の収束のさせ方の見事さ。
友人たちが何故玲美のカンニングを助けるのかという動機の弱さ、大学の女性助手のキャラクターがあまりに類型的すぎるなど、ちょっとした不満点はありますが、これだけ巧い語り口をみせられたら満足かな。

 

いままで僕が読んだ中ではくろけんさんのBESTですね♪



採点   4.5

(2006.6.29 ブログ再録)