アンソロジー『気分は名探偵』

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犯行現場へようこそ。推理小説の名手6人が極上の謎をお届けします。 帯より各作家のコメント
我孫子武丸「バラエティに富んだ内容になったので、読者の方にそれぞれの好みにあった楽しいものが1つはあるはず。」
有栖川有栖「1日1本だったら、1週間近く楽しんでいただけます。」
霧舎巧「犯人当てではあるけれど、普通に短編として読んでも面白いです。」 【貫井徳郎】「競馬も馬券を買わずに見ているだけではつまらないのと同じで、ぜひ謎を解きながら読んでいただきたい。」
法月綸太郎「もとが新聞連載だったので普段の僕たちとはまた違う面白さもでているのでは。」
麻耶雄嵩「問題篇と解決篇にせっかく分かれているので、1回は問題篇だけ読んで考えてみるのもいいのでは。」

夕刊フジの大好評連載がついに1冊に!! 


Amazon紹介より

 

 元々、ブログのお仲間であるiizuka師匠のブログでの、巻末の覆面座談会の作家当て企画に参加するために購入。しかしこの企画、あまりに簡単すぎて速攻ボツになってしまいました。
 そんなに簡単なのかな?と思いつつ、でもちょっと楽しみに購入、一応作品を読んだ後に覆面座談会を読みましたが・・・・

 確かに簡単すぎですね~。これは正解者殺到で、確かに企画の意味が無いですね(笑)。ということで、本編の犯人当て用短編の感想を、iizuka師匠に習い、面白かった順に。著者の後にあるマークは僕の推理の結果ということで。○が懸賞用に答えなければいけないであろう要素(犯人、トリック、推理の過程)が全部わかった物、△はその一部が分かった作品(犯人は分かったがトリック・過程が間違ってたor分からない)、×は完全にはずしてしまった作品ということで。

法月綸太郎 『ヒュドラ第十の首』(×)
iizukaさんは僕のコメントに対し、法月を短編に収穫の多い作家だと答えておられましたが、これもその一つになるんじゃないかと思います。まさにそのままの意味で最初から最後までヒントが散りばめられてて、まさに犯人当ての手本じゃないかと。最後の法月警視のつぶやきが、まんま僕のつぶやきと化しました。

貫井徳郎 『蝶番の問題』(○)
夕刊フジ」での懸賞当てで、ぶっちぎりの正解率1%!!心して挑戦。物語の語り口の巧さはこの中でも、一番いいかもしれません。好みで法月さんを1位にしましたが、今回の作品の中ではこの2作の上位は動かないと僕は思います。ヒントの散りばめ方も露骨なのに提示の仕方の上手さがこの正解率の低さに繋がったんじゃないでしょうか。でも決して卑怯な作品ではないですよ♪ちなみに、僕はこれ完全に解けました。やったぜ!!

麻耶雄嵩 『二つの凶器』(○)
複雑さでいえば、多分これが一番複雑だと思います。問題編で提示される情報がかなり多いのでちょっと悩みます。どうも連載では「作者からのヒント」があったみたいですね~(解答編の後でもいいからそれも再録して欲しかったな~)。これに関しては、考える気になるかどうかが最大の障害で、考える気になりさえすれば解けるような気がします。なにより麻耶さんなのにちゃんと真面目に犯人当て(笑)。

④ 我孫子武丸 『漂流者』(×)
犯人当てという意味では、麻耶さんよりこちらの方が上。ただ好みでは無かった分、こちらを下に。今回ただ1作犯人当てではなく、人物当てという変則な問題ですが、読み終わってみると、ああそれでこの出題形式なんだーと感心しました。座談会を読んで、さらに納得。

有栖川有栖川 『ガラスの檻の殺人』(△)
有栖川さんらしからぬ、穴だらけのロジックの展開が非常に気になりました。一応多分作者の狙いとは違う方向から犯人は当てましたが、もう一つの問題凶器の行方は外しました。でも、正直「~だから、君が犯人だ。」という程に、他の可能性を消しきれてないと思うんですけど。

霧舎巧 『十五分間の出来事』(×)
この中で唯一つ、読み終わったあとの爽快感を感じなかった作品。別に犯人分からなくていいよ~、と思ってしまったのは何故なんでしょう。連載というのを意識しすぎて、失敗してるような気がします。

 全体の感想としては、やっぱり過去に犯人当て問題の経験の豊富な方はさすがに上手いなと思いました。その中では、やっぱり有栖川さんの低速飛行はかなり意外でした。自作では、「読者への挑戦」をいれたりしてるのにねえ。(2006.5.26 ブログ再録)