『闇に蠢く』(☆3.2) 著者:江戸川乱歩

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猟奇的嗜好の持ち主野崎三郎は彼の目に敵ったお蝶と両思いで幸せな猟奇生活を送っていたが、ある日からお蝶が何の影に怯えたものか、東京脱出を提案した。 野崎は前に行ったことあるS温泉の風変わりなところが彼の嗜好に合致し大変気にいっていたので、お蝶とともにそこへしばらく滞在するべく出かけていったの だが・・・・・・。人としてのタブーを破り、人外鬼畜の恐怖を描いた問題作。 


Amazon紹介より

 

乱歩初の長編・・・というよりは中篇ですね~。
しかしこの中には乱歩の乱歩らしい要素が詰まってますね~。
変態的な性嗜好、退廃的生活、闇に蠢く謎の影、洞窟、そして人肉嗜好・・・。

出来としては、冒頭から中盤にかけての怪しげな雰囲気は楽しめるんですが、後半それまでの雰囲気を払拭するような洞窟の冒険譚になり、そしてシュールともいえるラストを迎えます。

一つ一つの要素がいかにも乱歩なだけに、ファンにはそれなりに楽しめると思います。
後半の洞窟ものちの傑作『孤島の鬼』を彷彿させるし・・・。

ただ、全体的にそれらの要素の絡み方が若干不足してるのかなと。
いざ書きたいものをたくさん使ってみたものの、結果としてはそれらの使い方に悩んでしまって、結局全体が中途半端になってしまった感も否めません。

あと、イマイチ建物と洞窟などの位置関係がよくわかりませんでした。

それにしても、相変わらず光文社版全集の、全体の5分の1はあるんじゃないかという注釈がふるってます。
かなり詳細に検討して矛盾が発見されると、「おそらく著者が勘違いしたのだろう」みたいにバッサリ切ってたりします。これだけでももう一度買い揃える甲斐あり???

(2006.5.23 ブログ再録)